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#26 Bitter Rain 3
前も後ろも、上も下も無い時間のどこかで──
「俺……いつの間にか寝たのか? 明日にでも万理姉に、詫び入れておくか」
万理華との電話の途中で起きた再現現象だったが、それも突如として終わり、今は闇の中に浮いているような感覚を得ていた。
『爻?』
「……ん? 誰だ? 誰かいるのか?」
『忘れてしまったの? ……私の声』
目を開いているのかも分からないくらい深い闇の中、その声は爻に語りかける。
『見せてあげる。私の……再現現象を……』
「これは夢じゃないのか? 再現現象はまだ……続いている?」
『ふふっ、爻はこれを見たあと、何を思うのかしら……』
直後、グニャリと歪む空間が、一点に向かい収縮し始めた──




