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#19 電話
夜のこと──
以前、万理華に渡された名刺に書かれた、電話番号を入力する爻。
「……たくっ、それにしても、どうやって店を探し当てたんだ?」
受話口の向こうでは、呼び出しの音楽が鳴っている。
「はい……」
「掛けろって言ったから、掛けてやったぞ」
「あら、爻! 知らない番号だから、私を狙うストーカーかと思ったわ」
「……切るぞ?」
「ごめん、ごめん! でさぁ……」
「……茉莉のことだろ?」
その一言は、針が時を刻む音だけを、2人に聞かせた──
「わたしがいない間に、何があったの?」
言葉に詰まりながらも、爻は口を開いた。
「…………あいつは……茉莉は……」




