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#18 しめしめ
「万理華さん。よかったら奥の部屋で、爻さんとお話してください」
「あら、いいの? それじゃ……」
「そんな気を使わなくていいんですよ。すぐ帰しますから」
万理華の背中を押しながら、艾に聞こえないくらいの声で話す爻。
「もうここには来るなよ。夜にでも電話するから……それでいいだろ?」
万理華の表情が、しめしめといったものに変わったのを、爻は見逃さなかった。
「……最初からそれが目的だったのか? だったら電話してくればいいだろう? こんな面倒なことしないで……」
「だって、爻の連絡先知らないんだもん」
「教えてないからな……」
「爻? 電話……必ずしなさい。話があるから……」
話の内容は、だいたい察しがついている爻だったが、そのことを口にする気持ちには、未だなれずにいた。
「それじゃあ、艾ちゃん。またね~」
万理華は笑顔で手を振りながら、店から姿を消した。




