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#17 万理華(まりか)
店内に張り詰める空気──
「……あのぉ、爻さんの……お知り合いの方ですか?」
爻の顔色を窺いながら艾は尋ねた。
「知り合いも知り合い。お風呂も一緒に入ったことあるしね」
聞いていた艾の方が、顔を紅潮させて俯いてしまった。
「誤解を与えるようなものの言い方をするなよ! 姉貴っ!」
俯いていた艾の耳がピクッと動く。
「……爻さんの……お姉さん?」
「万理華です。よろしくね」
「……よっ、艾といいます。こちらこそ……よろしくお願いします」
艾の手を握ったままの万理華に対して爻は……。
「仕事の邪魔だから、とっとと帰れよ! だいたい万理姉、本なんて読まないだろ?」
「読むもん! 読むことにしたんだもん! 艾ちゃん! 何かくださいっ!」
頬を膨らませ、艾に詰め寄る万理華。
「あぁ……厄介なことになりそうだなぁ……」
(万理姉って呼んでるんだ……)