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#14 退院
「これ、退院祝いにと思って……」
爻は持っていた花束を差し出した。
「綺麗なお花。それにいい香りですっ!」
何となく語尾に力が入ってしまい、臭いに敏感になっている艾には、とてもありがたい贈り物だった。
「喜んでもらえてよかったです。あっ! さっきの看護師さん、王子様って言ってたんですけど……なんですかねぇ?」
「なっ、なんでしょうねぇ? 望月さん面白い方だから。はははっ……」
(もうっ! 望月さんたらぁ!)
退院の手続きは既に済ませていたため、艾は花束を抱え立ち上がる。
「さあ、爻さん……行きましょう?」
小さな艾に大きな花束──
爻にバレないように、満面の笑みで病室を後にする艾。
(お花……お店に飾ろう)