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#13 王子様
艾は気になっていた。
(ん~……昨日お風呂に入っていないから、臭わないかなぁ……)
襟や袖の辺りをしきりに嗅いでいると……。
「あら、なぁに? 夜勤明けの私に比べたら、臭いなんてしないから大丈夫よ。それとも……男の子にでも会うのかしら?」
担当看護師の望月さんの言葉に、動きが止まってしまった艾。
「うふふっ、分かりやすいわねぇ! 彼氏?」
「い、いえっ……そんなんじゃなくて、あのっ、そのぉ……」
「そうなれたらいいわね? どれどれ?」
望月さんは艾に顔を寄せると、深く息を吸い、臭いチェックを始めた。
「うぅ……くさい……ですか?」
と、その時……。
コンコンコンっ──
「俺です……爻です」
「来たわね? 王子様。しっかりね! 艾ちゃん!」
望月さんは病室のドアを開け、爻に何やら話し掛けると、艾にウインクを残して立ち去った。
「……お、おはよう。爻さん」