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#10 強がり
担当医の話では、艾は翌日には退院出来るということだった。
面会時間いっぱいまで2人の話は続き、艾はいつも通りの笑顔を取り戻したように見える。
「じゃあ、俺……帰ります」
自分の右腕に巻かれた包帯に、艾の視線を感じた爻は……。
「大丈夫ですから。これは大げさだって何度も言ったんですけどね。看護師さんが『いいから』の一点張りで……」
右手を開いたり閉じたりしながら、艾に安心してもらおうと笑顔を向ける爻。
「じゃあ、明日……迎えに来ますね」
「……えっ? は、はいっ!」
さらっと明日の再開を約束したことがうれしくて、恥ずかしくて、掛け布団を鼻のあたりまで引っ張りあげる艾。
「……そ、それじゃあ……あっ、あ、明日です!」
今日一番の笑顔を見せながら、ドアを閉めた爻は……。
(いっっってぇぇぇぇぇ!)