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#9 病室
「……ん」
艾が目を覚ますと、そこは病院のベッドの上だった。
起き上がろうとしたとき、手が握られていることに気が付いた艾。
「……爻……さん?」
「ん? ……艾さん! 無理しないでください。あの……お店のこと……ごめんなさい。割ったガラスはきちんと修理してもらいました。それから、今日の分の売り上げは、俺が弁償させてもらいます」
爻は立ち上がり、深く頭を下げた。
「どうして……爻さんが謝るんですか? 爻さんは私を助けてくれたじゃないですか。だから……頭を上げてください」
「……めた……です」
「えっ?」
「俺……全部守ろうって決めたんです! もう何も……失いたくないから」
まっすぐ力強い眼差しに、艾は深く聞くことをせず、ただ一度だけ頷いてみせた。
「……ありがとう」
窓から射し込む西日が、病室の壁に長い影を2つ伸ばす。