第13話『全ては記憶と共に』
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「へへへっ。絶対に口はわらねぇからな?」
煌霊力吸収事件の盗人は一時的に学院側で保護する事になり、
生徒会側での事情聴取が行われていた。
「んー。中々困った子ですねー」
セシルは苦難の表情を見せる。
今までの事を整理すると、この盗人はどこかの学校の生徒だと推測される。
目的としては、"裂闇の黒剣„の奪取。そして、
「凛人様の殺害、と言った所でしょうか」
凛人の殺害。他所の学校は凛人の存在と"裂闇の黒剣„の存在を掴んできていると言う事になるだろう。
「貴方、どうやってこの学院に侵入したのでしょうか? お聞かせ願います」
「だから言うか! お前らはアホか!」
どうしたものか、と思うセシル。
扉が擦れる音と共に、学院長が現れる。
「やぁ諸君。今はどう言った状況だい?」
「彼が中々喋ってくれないもので・・・」
瞬間、学院長の表情が変わる。
氷の様に冷たい表情が、周囲を凍結させる。
「申し訳ないが、セシル君。ちょっと席を外してくれまいか? 他の生徒にもそう伝えてくれ」
「わ、分かりました」
そう言うと、その場の生徒が続々と退出してゆき、部屋には学院長と盗人の二人きりとなる。学院長は、ふぅと息をもらし手を組み、
「さて、率直に聞こう。誰からの指示だ」
「・・・ッ」
盗人はその場に固まる。固まると言うよりも"動けない„と言う表現が正しい。
学院長の冷淡な眼差しが盗人を喰らう。
「は、ははっ! だ、だから言わねぇよ! さっきから言ってんだろぉが!」
その空気を振り切り盗人は言葉を発する。しかしその言葉に効力は持たない。
学院長は、続けて質問を投げかける。
「ふむ、わかった。なら質問を変えよう」
「だぁかぁらぁ? 喋らねぇっていってんーーーー」
『覇夜の執行者か?』
盗人の表情が一変。これは当たりを引いた。
「はははははっ! 君は分かりやすいな! そうかそうか! そう言う事か、なら話が早い!」
学院長は笑っていた。まさに魔女の様な笑い。
気味が悪いと誰もが思うだろう。
その笑いには、面白さと言うよりも憎しみの様な感情が含まれている様に見えた。
「聞きたいことは聞けた。もう用はない」
「な、なに勝手に言ってやがる! そ、そんなの、聞いたこと、ねぇよ! 殺すぞッ!」
その言葉を引き金に、学院長の背後に魔女が現れる。
「言葉を慎みたまえ。妾の前だぞ?」
極端に温度が低下し、室内の水分が凍結する部屋に出現した精霊が言う。
「まぁまぁ落ち着け、"クワイア„」
盗人は"クワイア„と言う言葉を聞いて、またもや表情を変える。
次の表情は『恐怖』そのものだ。
「ク、クワイアだって・・・? 冗談じゃねぇ・・・水の、"水の煌級精霊„・・・じゃねぇかよ・・・」
ーークワイア。精霊の根源となる五属性の中の一体。
その力は『災禍』を生み出すとも言われている。
「まさか、お前は・・・す、『水災の魔女』!?」
「妾達を知っているとは光栄だな、人間。だが、その命の炎もこれまでだ。
妾の力で消してくれよう」
「や、やめ、てーーーー」
盗人は意識を失う。
力を行使する前に、極度の恐怖で意識を失ってしまった。
クワイアは残念そうに、
「ふぅ、全く。これだから今の人間はつまらん。なぁ? リレイ。そう思わんか?」
「はははっ! そうかもしれないな。だが、面白い奴も案外いるものだぞ?」
リレイが室外にいる生徒達に指示を出す。
『申し訳ないが、だれかこいつを医務室に運んでくれ。少々遊びすぎたよ』
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その頃凛人は、修復が終わったユニオンルームへと来ていた。
「では、凛人さん。改めて"裂闇の黒剣„を手に取ってください」
アリスの指示が入る。
凛人は今、『ルフラージ』と『裂闇の黒剣』との適性率を再度チェックしていた。
「い、いくよ!」
腹をくくり勢いよく剣をつかんで見せる。軽く二振り程、剣を動かす。
「凛人さん。今の状態で何か気になる事はありますか?」
「気になるというか、むしろ逆さ。力が流れ込んでくるのが分かる」
まずは第一段階クリア。
この力が流れ込んでくる感覚は、盗人から剣を取り戻して、止むを得ず剣を掴んでしまった時と似た感覚だ。
「では、次に喚剣融合を行ってみましょう。危険が伴うので、危ないと思ったらすぐに中断して下さいです! いいですか?」
了解。と返事をし、凛人は静かに目を閉じる。
すぅ、はぁ。
呼吸を整え、
「喚剣融合。ルフラージ!」
その剣から姿を現し、凛人に半身に力を注ぎ込まれていく。
グラディスの精霊とは比にならない負荷がかかる。
「ぐっ・・・」
今にも力が暴発しそうになる。
ーーーーしかし、凛人は"前の凛人„ではない。
「ーーーー完了」
凛人は『裂闇の黒剣』と、『ルフラージ』
と言う高い壁を乗り越えたのだ。
アリスが声を震わせて言う。
「て、てて、適性率・・・"98%„・・・こんなの、初めて、み、見ました・・・」
凛人の身体に長い事居ただけの事はある。
「おかえり、ルフラージ」
「雨宮 凛人。貴様は世の力を振るうに相応しい。だが、面白くなければ喰われるのみだ」
「わかってる」
そして、清々しい表情で凛人は言う。
『これから僕達は家族だ、ルフラージ。よろしくね』
「ッ!」
ーーーーーーふっ。親子と言うのはここまで似るものか。
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『ーーーーこれから"俺達„は家族だ、ルフラージ。よろしくな』
彼は笑顔で言った。
誤字、脱字等がございましたらご指摘宜しくお願い致します!
なんといいますか、2章。多分めっちゃ長くなりそうな予感がする((
ま、まぁ凛人君大活躍だし? 剣バンバン振るっちゃうし?
ーー長くなっても怒らないでくださいお願いします。