第12話『奪取』
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ー報告ー
「精霊召いの喚剣士」ついに、アクセス数が1000を超えました!T^T
この作品を見てくださっているみなさまに、多大なる感謝を!そしてこれからも
物語は続いていきます! よろしくお願いしたします! 記念として今回は
ちょっと長めです! ぜひたのしんでいってください!
ここ煌聖学院の学店街は、いつも賑やかだ。
1週間の学び疲れた身体や精神を、一人でも、二人でも、大勢でも楽しめる環境が整っている。そんな学店街を探索する凛人とシェリアは、十分と言って良いほど満喫していた。
「それにしても、とんでもなく広いんだね・・・ここ・・・」
「そうね・・・どれくらい歩きまわったかしら・・・」
今日と言う日を楽しんだ二人の"デートらしからぬ何か„は終盤へと近づいていた。
凛人は異変に気付く。
「あれ?」
「どうしたの? 凛人」
「あぁ、僕がこの学院に初めて来た時さ、とても長い道を歩きまわって君を見つけたんだよね。その時、いくら歩いても疲れを全く感じなかったんだ。でも今はなんか違う。とても歩き疲れたと言うか、なんと言うか・・・」
凛人は顔を曇らす。
この学院の生徒は全員が特殊であるため、ちょっとした運動を行う際に身体が勝手に煌霊力を使用し運動補助をしている為、疲れを感じないようになっているのだ。
この運動補助は、学院内、もしくは喚剣融合などをして、精霊もしくは悪魔と接続関係下にないと効力を発揮しない。
現状、今は学院内であり運動補助が発動しているはずだが、ちょっと前から疲れを感じていた。
「私も思ったわ。運動補助は常に発動している訳だし、こんなに疲れを感じるほどの煌霊力は使用しないはずなんだけど・・・」
ーー気分的な問題だろう。
二人はそう思い、あまりこの話に触れなかった。
「ま、そろそろ帰りましょうか」
「そうだね、送るよ。シェリア」
その時、ある音を耳にする。
ーーポーーピーーポーーーピーポー
多数の救護車のランプ音。
凛人達がいる所から、そう遠くは無い場所から聞こえて来る。
「何かあったのかしら・・・?」
今日は街に多くの学生がいた。そして多数の救護車がその方向へ次々に
向かっている様子を二人は捉えた。
「行ってみようシェリア。嫌な感じがする・・・」
二人は家路から方向を切り替え、疲れを感じたまま走り出した。
「急いで運べ! まだあっちにも数人倒れてるぞ!」
「隊長! これキリがありません! どれだけの人が倒れているんですか!」
二人が現場に着いてみると、そこには緊迫した空気が流れていた。
「な、なによ・・・これ・・・」
シェリアはその光景を目の当たりにする。
ついさっきまで賑わっていた雰囲気とは一変、学生達が様々な症状を訴え
緊急搬送されたり、倒れている生徒もいた。
凛人が倒れている生徒に近づく。
「ーー煌霊力切れだ・・・」
その倒れている生徒は、明らかに煌霊力切れだった。
他の生徒も、症状を見るからにおそらく煌霊力切れだろう。
「煌霊力切れってどう言う事・・・?」
「やっぱり、おかしかったんだよ。僕達もさっきから疲れを感じているだろ?
この感じ・・・煌霊力を吸収されてる?」
微量だが、時間をかけて、ここに訪れる生徒の煌霊力を何者かが強制的に吸収している様に感じる。このままでは危ない。
煌霊力を吸収されすぎて命まで落としかねない、と戦慄する。
凛人達は救護班の隊長に話を試みる。
「失礼します、煌聖学院生徒会の者です。今はどう言った状況で?」
シェリアの顔が広い事で、すんなりと本題に入る。
「急に人が倒れたと連絡が入り、現場に向かってみたらこの有様で・・・連絡をくれた生徒も倒れていました・・・症状的には煌霊力切れと言った所でしょうか」
凛人の推測通り。
やはり、何らかの理由で煌霊力が吸収されているのだ。
「でもどうしてこんな・・・・・・ん?」
「凛人?」
凛人の目つきと空気が変わる。
「・・・ごめんシェリア、ちょっと行ってくる。救護班の人達と、ここを頼むよ」
「ちょ、凛人!」
残りが少なくなっている煌霊力を使い、疾風の様に駆け抜ける。
この量の煌霊力を吸収するとなれば、そう遠くには居ないとふんだ凛人は、
さっきから辺りを気にしていた。その甲斐があり、人影をつかむことができた。
「くそっ、逃げるの速すぎかよ・・・」
目で相手を確認できる距離。しかしその間合いは中々埋まらない。
凛人は使用する煌霊力を増やし、更に加速し、間合いを詰めていく。
「おい! 止まれ!」
当然だが相手は見向きも止まりもしない。
「ーーちっ。面倒だな」
瞬間、黒い飛翔体が飛んでくる。
「なっ!」
その飛翔体が凛人の服をかすれる。
今の一発、殺す気で撃った様に感じた。この殺気、どこかで・・・
「あぁ、もう! "これ„使いたくないけどっ」
煌霊力を足に集中させ、一気に爆発させる。
「ーーなにっ!?」
一瞬で相手の隣につく。
「止まって・・・もらうよっ!」
相手をつかみ、その場に落ちる二人。
「くそっ・・・」
地面に着く前に体制を立て直し、見合う。
ーーーー凛人は目を疑った。
「な、んで・・・?」
相手の手には、闇の覇気を纏った"裂闇の黒剣„があった。
「ったく・・・お前のせいで俺様の計画が台無しじゃねか? 雨宮 凛人さんよぉ? お陰様で煌霊力を吸収しきれなかったじゃねえ、かっ!!」
闇の斬撃が襲いかかるが、凛人もすぐさま回避をする。
「どうしてお前が裂闇の黒剣を持っている!」
その時、凛人の携帯端末に着信が入る。
「理由は、その電話の主が教えてくれるだろうよ。ククククッ」
着信元は、生徒会長。『アルペジア=セシル・レイフォード』からだった。
『凛人様、落ち着いてお聞き下さい。凛人様も把握しておいでだと思いますが、突然の煌霊力切れによる負傷者が続出しているのと、もう一つ大変な事が起こりました。
ーー"裂闇の黒剣„が何者かによって奪取されました・・・』
「奪取!? 盗まれたって事ですか!?」
今目の前にある"裂闇の黒剣„は盗まれた物で間違いないだろう。
『現在、総力をあげ捜索にあたっていますがーー』
「会長、ちょっと時間を頂きます。また後で必ず連絡しますから」
『り、凛人さーーー』ガチャっ。
屈伸をし、身体を伸ばし。
「喚剣融合。完了。グラディス。
こう言う訳だ。その剣は大事な物なんだ、返してもらうよ」
剣を構え、見合う。
「前に殺しそびれたからなぁ? 今回は殺らせてもらうぜぇぇ!」
殺気。前の殺気の正体がこいつか。
「お前が生きてると、こっちも色々面倒なんでなーーーーっく。やっぱり煌霊力足りねぇ・・・吸収する量が少なかったか。まぁいい。死んでもらうぜぇぇぇ!」
盗人と凛人の一騎打ち。この勝負、圧倒的に凛人が不利だろう。
なんせ、残りの煌霊力量が違う。
どう煌霊力を使うかが鍵となるこの勝負、一瞬たりとも気が抜けない。
「おい、凛人さんよぉ、その足で戦えるのか?」
痛い所をつかれる。
さっき、この盗人をとめる際につかった"バースト„の負荷が足にきていた。
「正直、結構やばいかな。でも、それは返してもらう」
「じゃ、死ね」
鋭い剣技のぶつかり合い。
前回のシェリアとの戦いで対人の戦闘経験があったため、
相手との間合いの取り方、攻撃、カウンターの仕方にキレがでていた。
「ははっ! 中々やるじゃねぇか!これはどうだ!」
たった一振りで、無数の剣撃。
「これは避けられないだろうなぁ!ーーーっく、まだ、だ。まだ出てくるなよ・・・」
「くそっ、ふりきれるか・・・!」
凛人の剣が輝きだす。
「百万の剣勢!!!」
その剣撃に対抗する数の剣勢。
ぶつかり合い、凄まじい衝突力と衝撃破をうむ。
「ーーなんとか、これは振り切れたみたいだね」
「ほぅ、今のを防ぐか。楽しくなりそうじゃねぇか!」
凛人は相手の様子が違う事を感付いていた。
さっきから攻撃をするにつれ、苦しい表情をちらつかせてきている。
これは、なんだろうか。
「どうした! さっきから苦しそうだけど?」
「うるせぇ! 無駄な口叩くなよ? ブチ殺すぞ?」
「そう、ならやってみなよ。僕も全力で行く」
「はははははははっ! いいぜぇ! この剣で消してやるよ!」
ーーやっぱりな。この盗人、"裂闇の黒剣„に対して相応の容量を
持ち合わせていない。それをカバーするために、煌霊力を吸収していたのだろう。
しかし、今にものまれそうになっている・・・
"ルフラージはもう目覚めている„と言う事か。
「くらェェェェェェ!」
黒い覇気が襲いかかる瞬間、それは訪れた。
「まだ、だ! まだ、でて、くるなよ、まーーーーー」
剣が盗人を飲み込み、ありったけの煌霊力を吸収して、
その存在は独立する。同時に盗人はその場に倒れこむ。
そして独立したルフラージ姿は、前の様なハッキリとしたものではなく、不鮮明な剣の状態だった。
鋭い剣先がこちらに向く。
「またこいつとやりあうのか・・・」
「雨宮 凛人。剣の姿だからと言って甘く見るでないぞ。久しぶりの目覚めが心地よくない事に、腹を立てているのでな」
僕の状態は限界にきていた。
この一撃をかわせるかどうか際どい所だがーーーー
「ごめんね、ルフラージ。君には帰ってきてもらうよ」
暗黒の一線。すばやい爆風と衝撃。そして恐ろしい程の覇気。
その避けようがない攻撃を、
「・・・ふぅ。今のは危なかったな」
あの極限の状態で、凛人は脅威の集中力をもって
"裂闇の黒剣„をしっかりと掴み、手にしていた。
「この感覚、懐かしいぞ。雨宮よ」
「・・・? わからないけど、そりゃどーも」
剣は落ち着きを取り戻していた。
凛人の煌霊力が、みるみる回復していく。
「すごい・・・」
「凛人!!」
慌てて駆けつけたシェリアが言う。
「こっち側からとんでもない音が聞こえてきたんだけど、大丈夫!?」
「あ、シェリア! 大丈夫だよ! そっちは?」
「こっちもなんとか落ち着いたわ」
続いてセシルも駆けつけた。
「凛人様! お怪我は・・・・・・ってその剣・・"裂闇の黒剣„じゃないですか!」
剣を担ぎ、凛人は笑って発する。
「雨宮 凛人。"裂闇の黒剣„ 回収及び、敵の制圧。完了いたしましたっ」
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