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第一章 閻天拳王は村娘に憑依する 6

『バカラン! バカラン!』

 総勢で五十人はいるであろう盗賊、黒鷲の大量の馬群が地面を疾走する音が響く。通常、聞くはずもないその音は、それだけで人間に本能的な恐怖を与えるだろう。しかし――。

『ブルルル! ヒュルルルルブル!』

 その馬たちが一斉に鳴き声を上げて急に静止した。騎乗する人間の指示なしに勝手に止まるなどありえない。そして、この馬たちも少なからず戦場を潜り抜けてきた。狼ぐらいならば、集団で殺してしまうほどの気性を持つ馬である。

「これは――」

 頭領である刀傷の男が不審げに馬の首を撫でた。乗りなれたその馬に現れる感情は恐怖だった。

「お頭! 馬がいう事を聞きません!」

 一斉に止まった馬に周囲を混乱していた。それに刀傷の男は手を上げて応じる。

「全員馬から降りろ。そして……前を見ろ。馬が恐怖している原因が居るぞ」

 刀傷の男の言葉に暗闇の方を凝視する男達、するとしばらくして、ゆっくりと大群向かってくる者がいた。

「ふ……こいつか。アドルフ達をやった魔法使いは」

 黒鷲の前に現れたのは、一人暗闇を平然と歩く、ラルの姿だった。

「おい! 魔法使い!」

 刀傷の男が声をかける。するとラルはスッと止まった。

「どうした? 降参でもしに来たのか?」

「降参だと?」

 刀傷の男にラルは明らかに不快な顔をした。武器を構えた男達を前にそんな表情をする少女の姿はとてつもなく異様だった。

「我がなぜ降参などするのだ。明らかに我よりも弱い者達に降参など……冗談だとしても死に値するわ」

『おいおい……』

 男達は明らかに戸惑っていた。その中でも血気盛んな者達は前に出ようとする。

「待て! 動くな! 相手は魔法使いだぞ! こうして一人で来た以上、罠を張り巡らせているに決まっている! うかつな真似はよせ!」

 刀傷の男が叫ぶとピタリとその動きが止まる。ならず者の集まりに見えた集団は、しかし、頭領だけには絶対の信頼を寄せているようだった。

「ここは俺がやる。お前らは援軍を警戒しろ」

 男は腰から剣を二本抜いて、そして構える。

「お、お頭が二本抜いた……見れるのか、双剣のジェスが」

 刀傷の男。ジェスが殺気を放つ。それを受けてもなおラルは歩みを止めない。距離を詰め続けていく。

「魔法使いとやるのは初めてじゃねえ。おい! 名乗れ! 俺はジェス! 黒鷲の頭領だ!」

 ラルはそれに応じた。しかしこちらに構えは無い。

「我は閻天拳王。さきほどから魔法使いなどと言っておるが……我が使うのはこの拳のみ、我に挑む事がどういう事か死を持って知るがよい」

「ほざけ!」

 ジェスはまるで疾風の様に軽やかにラルに向かって疾走した――。






 

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