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魔王様は逃げられない!?

 ある所に、若い魔王様がいました。

 そんな魔王様に、魔王様の父親は言いました。


「いいか、絶対に勇者に出会ったら逃げるんだぞ!」

「父様……流石にそれはやりすぎなのではないかと。そもそも、魔王なのにそんな勇者を怖がるなど……」


 けれどそんな年若い魔王に、父親は魔王そっくりの可愛い顔を真っ青にしながら言います。


「今まで魔王だから、人間の姫やら王子やらを攫うぞーといった私の前の魔王達がどうなったか、お前も知っているだろう!」

「……えっと、とても綺麗なお姫様の格好に女装した勇者、もとい人の国の王子が、攫いに来た魔王を返り討ちにして、そのままお嫁さんにしたんでしたっけ」

「そうだ! そのお陰で彼の弟が魔王を継ぐ事になったのでそれはいいんだが、その次の私の兄の話だってとんでもない事になっただろう!」

「あー、確か一目惚れした勇者、もとい、人の国の王子を攫おうと思って寝こみを襲おうとしたら、そのままベットに引きずり込まれたんでしたっけ」

「そうだ!」

「……僕、その二人よりも強いですよ?」


 可愛い仕草で偉そうな事をいう魔王だが、確かに歴代魔王の中では強い方で、魔王の父をも凌ぐ魔法の使い手なので言い分は分る魔王の父だったが、そこで、魔王の父は深々と溜息をついた。


「だがお前は私のたった一人の息子なのだ。もしも嫁に取られた、魔王を継ぐ者がいなくなる!」

「そうですね……父様の言い分はもっともだと思います」


 愁傷に頷く魔王だが、実の所もう何度も聞かされたので面倒になっていたというのが本音だった。

 そしてそんな素直に頷く魔王に魔王の父は満足したらしく、


「じゃあ、旅行に行ってくる。くれぐれも勇者には気をつけるんだぞ!」

「はいはい。所で、だれと旅行に行くのですか?」

「……一人だ。くじ引きで当たったんだ、人間の」

「……僕は連れてってくれないんですか?」

「一人分だったので」

「父様酷い。陰謀を感じる」

「まあ、というわけで後はよろしく」


 そう言って魔王父は、旅行に行ってしまいました。






 所変わって。


「何で俺が魔王退治しなきゃならないんだ。嫁探しにもってこいだろうって……大体、俺には好きな奴がいるって言っているのに聞きやがらないし」


 ぶつぶつと呟く、人の国の第二王子、勇者は不機嫌そうに歩いていた。

 本当は町にお忍びで出て、今日は、大好きな、まー君と遊びに行こうと思っていたのにと呪うように自分の父親を思い出しながら魔王城にやってきたのだが。


「すみませーん、勇者ですが……なんていったら危険だよな。確か親書のようなものがあったからそれを届けに来た、という事で入り込んで安全に帰るか。一応魔王の父親は魔王城からいなくなるように手を打ったと、あの狸親父が言っていたが……。大体、歴代勇者が魔王に惚れているからって俺までそうなるわけないだろう」


 勇者はうんざりしたように呟きながら城門の前に来て、インターホンを鳴らした。

 このままピンポンダッシュをしようかと勇者は思ったのだが、


「こんにちはー。お手紙を届けに来ました」

「はーい、側近……はいない、誰か出れない? ……全員サボってやがる。あ、すぐいきまーす」


 その声がどこかで聞いた事がある気がしたのだが、勇者は出てくるのを待っていると、重い音を立てて城門が開いて、ひょっこり見知った顔が現れる。


「あれ、ゆー君、どうしてここに?」

「いや、まー君こそ……俺は魔王様にお手紙を渡そうと思って」


 まー君こと魔王は焦る。

 お忍びで人の街に遊びに行っていた時に、まー君と名前を偽ったのだが、まさかこんな場所にゆー君が来ると思わなかったのだ。

 とはいえ、勇者でなかった事にほっとしながらも、大好きなゆー君が来たのでそのまま帰すわけには行かないかな……と思っていると、そこで魔王は気づいた。

 ゆー者の持つ剣の柄に、王族っぽい家紋がある事を。

 それを見た瞬間、魔王は冷や汗が吹き出ると同時に、これは機会だと考えた。

 そう、この大好きなゆー君という勇者を手に入れる最高の機会だと。


「勇者に会ったら絶対に逃げるんだぞ!」


 という父の言葉が脳裏をかすめたが、欲望の方が勝った。

 まずは玉座の間に案内して、そこで待っている間に側近たちと一緒に対策を立てよう、そう思って魔王は勇者を案内していく。


「ゆー君には後で、お茶と菓子を用意するね」

「ありがとう、まー君。でもまー君は魔王城に働いているなんて知らなかったよ」

「ま、まあ、ね。でもこの前食べたお店美味しかったな。また一緒に行こうね」

「そうだな。そういえば西の方にある、リリノア公園で、ハルアの花が見ごろだそうだから、今度一緒に行かないか?」

「そうだね、いいね。あ、ここが魔王の間だよ。暫くここで待っていてね」


 そう魔王は告げて、まずは逃げて対策を立てようとこっそり側近達を探そうと二歩程度勇者から魔王が下がったその時だった。


「まー君、お前、本当は魔王だろう」


 そう声がして、魔王はおそるおそる振り返る。

 そこにいたゆー君、もとい勇者は、何故か目をぎらぎらとさせて魔王を見ている。

 嫌な予感しかしない魔王だが、とりあえず誤魔化してみる事にした。


「やだなあ、もう、そういう冗談は面白くないよ」


 そこで、勇者が魔王の間を指差す。

 その指の先には一枚の肖像画が飾られており、


「そっくりだな、まー君に」

「ぎゃああああああ」


 悲鳴を上げて魔王は逃げ出したのだった。






 待て、と言われて待つわけがないだろうというわけで、魔王は逃げ出したのだが。

 とりあえず、声が聞こえたので傍にあった部屋のドアを魔王が開けると、アレな感じの側近がいて、魔王はじと目になりながら、


「……さっさと身支度を整えて僕を助けろ!」

「どうかされたんですか? 魔王様」

「勇者が来た」


 短く端的に告げる魔王に、側近が、


「あー、じゃあもう駄目ですね。目が合った瞬間、もう魔王様が犯されるの決定ですね」

「ふ・ざ・け・る・なー! もう少し何かこう……」

「勇者に目をつけられた魔王様、基本的に襲われた挙句めろめろにされるのでもういいかなって。付き合うの面倒くさいし」

「面倒くさいって何だ! もっとこう……」

「じゃあ魔王様は、勇者が嫌いなんですか?」

「あ、う……それは、その……」


 顔を赤らめてもじもじとさせる魔王様に、側近は面倒そうにみていると、


「魔王、ここか!」

「でたぁあああああ」


 悲鳴を上げて別の出入り口から逃げていく魔王。

 それを見送りながら、側近は放置する事にしたのだった。






「絶対にあいつ等給料から差っ引いてやるぅうう」


 そう呪いながら魔王は逃げていた。

 どいつもこいつも側近も含めて皆が皆、あんな事に!

 涙目になりながら、魔王が最後に逃げ込んだのは自分の部屋だった。

 そしてベットに上がり、布団の中に潜り込んでぷるぷると震えていると、


「ここか……ようやく追い詰めたぞ」


 魔王がその声を聞き、更に布団の中でぷるぷる震えていると、そこで布団がめくられた。

 ベットの上で、ぷるぷると涙目になりながら怯えたように震える可愛らしい魔王。

 そんなものがいたなら、襲うしかないよなと勇者は思った。

 ベットに勇者が足をかけると、その反対方向に魔王が逃げようとするので、俊敏な動作で勇者は魔王を後ろから抱きしめる。

 抱きしめられた事で、服越しに勇者の体温を感じながら、自分はこれからどうなってしまうのだろうと魔王は更に体を震わす。

 そんな魔王の耳元で、勇者が笑いを含んだ声で囁いた。


「それで、これからどうしてやろうか」

「え、えっと。まずは順序というものがありまして、僕にゆー君を襲わせてもらえればよろしいかと存じ上げます」


 魔王は精一杯抵抗した。

 けれど、結局勇者に魔王は襲われてしまったのだった。








「これで魔王は俺のお嫁さんだからな」

「うう……またも勇者から逃げられなかった」

「また?」


 不穏な気配を感じた魔王は、勇者の勘違いを正す事にした。

 そしてその説明を聞いた勇者が、


「そういえば歴代魔王を嫁にって聞いたな……でも今回は流石に気の毒なのでお前が行けって」

「? どういう意味?」

「俺二番目だから人の国を継がなくていいんだ」


 それを聞いて、つまりずっと二人で魔王城で暮らせるんだと思って、微笑んだ魔王。

 そしてそんな二人が更にいちゃいちゃしだすのもよくあるの事。

 さらに、それに怒った魔王の父が勇者に戦いを挑むのもまたよくあること。


 そんなこんなで、平和に魔王と勇者は、本日もいちゃいちゃしていたのであった。


{おしまい}

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