逆転勇者
なんと今回3000文字近いです。長すぎワロタwww
でもほとんど会話ですよ。
さて、ニーソクさんから話を聞くことにしたわけだけど、フォルだと多分怯えちゃって話してくれなさそうなんだよなぁ・・・。じゃあ仕方ない。
「それじゃ、僕から話そうか。
ではまず確認ですが、あなたの名前と職業は?」
「うぅっ、おいらはニーソク。無職だお・・・。
う、うぅ・・・これでも人間だお・・・。」
「ではニーソクさん。宿屋の店主であるおじさんの話だと、あなたがその姿になったのは『変なクスリを飲んだから』らしいですけど・・・あってますか?」
「な、なんでそれを知ってるんだお!?」
ニーソクさんは驚いたように大きく後ろに仰け反った。
しかも今ので泣き止んだようだ。なんか・・・いろいろ早い人だなぁ。
身振りは大げさだけど、まぁとにかくビンゴみたいだ。
「あなたが急にモテるようになったもんだから、街のみんなが調べてたそうですよ。
ですが・・・あってるみたいですね。」
「この街にプライバシーなんて存在しないのかお・・・。」
「あなたがそうなったのは変なクスリを飲んだからなんですね?
ではあなたは一体そのクスリをどこで・・・」
「待った!」
うわっ、びっくりした!
突然大声で叫ばないでよ、もう!
「そ、そんなことないお! クスリなんて使わなくてもおいらは元から超イケメンでモッテモテだったお!
今まではただ街のやつらが気づかなかっただけでーーーーッ!」
えっ、なんかいきなり必死に否定してきた!?
でもこれは流石に僕でも嘘だってわかる。
軽く顔を引きつらせていると、フォルがニーソクさんに指をつきつけて叫んだ。
「異議あり、だよ!」
「まぁなんとなく分かってるけど・・・フォル、どうぞ。」
「宿屋のおじさんの話だと、君は特別いい顔していたわけではなかったらしいじゃないか!
これはあきらかに君の証言とムジュンしているぞ!」
「むっ! そんなの、あのおじさんがそう思っただけだお!
だいたい証拠も無いのに、おいらと初対面の青髪さんがそんなことは言えないはずだお!?」
「残念。証拠はあるんだよ・・・くらえっ!」
フォルはなんでかノリノリで僕に一枚の写真を投げつけてきた。
受け取って見ると、その写真は何かの集合写真のようだ。中央には宿屋のおじさんらしき人がいる・・・もしかして、この宿の何かの記念写真なのかな?
「ん? この写真は・・・?」
「宿屋のおじさんが持ってきてくれたんだ。宿の宿泊客1000人突破記念の写真らしいよ。
当時宿泊していた人たちとおじさんで写真を撮ったんだってさ。・・・この写真、一番右端に写ってるのが人間だった頃のニーソク君らしいね?」
「え”っ!?」
え、そうなの?
僕は改めて右端に写っている人に注目して写真を見る。
そこに写っていたのは17くらいの男性。慣れていないのか、思いっきり引きつった笑顔をしている。これには周りの人も苦笑い・・・あ、引かれてるっぽいなこれ。
確かに顔は悪くないけど、特別良いというわけでもない。普通だ。
体格はかなり細め・・・うーん、これが『もやし』ってやつなのかな?
服のセンスも周りの人と比べると、とても良いとは言えないかな・・・ニーソクさん一人だけ、めっちゃ浮いてるし・・・。
・・・・・・って、フォルはいつの間に持ってきたのこの写真・・・。
写真を見ていると、壁際でおじさんが照れくさそうに頭をかきながら笑って言った。
「いやー、あんたらを案内してる間に持ってきてたんだ。説明するのに丁度いいと思ってな。
でも本当に役立っちまったなぁ! もっとも、コイツは昔っから家に引きこもってばっかで、写ってる写真はそれしかないんだがな! がーっはっは!!」
「・・・ニーソク君って、ヒキニートだったのかー。」
「ぐはぁっ、そ、それは言い返せないお・・・!」
ニーソクさんは精神的にダメージを受けたみたいだ。ちょっと可哀想に思える。
いや、そう言うフォルも随分長い間図書館に引きこもってたんだよね?
・・・うーん、しかしヒキニートってモテるものなんだろうか?
家から出ないんじゃ、そもそも出会いがないような気がするけど・・・。
それに外に出たってこの外見じゃ完全スルー安定だろう。やっぱり街がお洒落だからなのかな、さっき見た感じではこの街の人みんなお洒落だったし。
いろいろ考えていると、ニーソクはまた必死そうにどもりながら言葉を紡いだ。
体はクネクネくねり、目は虚空を泳ぎまくっている。・・・うわっ、すっごい動揺してるぞこの人!
ニーソクさんって本当に素直なのかもしれない。
「がっ外見は良くなかったかもしれないけど!
で、でもクスリなしでももももモテてたのは本当だお!? う、うう家にもたくさん・・・」
「異議あり、だな。」
脂汗垂らしながらニーソクさんはまだ否定しようとすると横からバルがフォル同様に異議を唱えた・・・って!
「バル!? あ・・・そうえいばさっきから姿が見えなかったけど、何してたの?」
「コイツに言われて、そいつの家に行ってきた。」
バルは宿屋のおじさんとニーソクさんを指差していった。
えっと、おじさんに言われてニーソクさんの家に行ってたのか。・・・いつの間に・・・。
それとこのおじさん意外と頭が回るのかな。常に先を考えてるみたいに思う。
そしてバルは持っきた袋に入ってる中身を机の上に出す。
中からは何枚もの紙束、瓶、手紙、そのほかよく分からない箱とかが出てきた。何が入ってるんだろう?
フォルとおじさんも同じ事考えたらしくて、二人とも机の方によってきて物色し始める。
バルはそこからやけに装飾のされたガラスのビン2つを手に持ってニーソクさんに向かって、とどめと言わんばかりに告げた。
「お前の家から2つ、妙に装飾のされた空き瓶を見つけた。あと説明書らしき紙束もな。」
「いぃっ!?」
「説明書・・・?
あぁ、これかな? えーっと・・・」
バルがそう言うと、フォルが机の上から分厚い紙束を2つ手に取る。
彼女はその紙束の内容をパラパラと捲って確認していく。さすがずっと図書館に引きこもってた本読んでただけあって文字を読むスピードがめちゃくちゃ速い。おかげで全部の内容を確認するのには5分も掛からなかった。
「うーん、要するにこのクスリは『飲めば人にモテる薬』と『姿を変える薬』のようだねぇ。
製作者の名前はシュピーゲル・・・・・・・確定じゃないですかやだー。」
「う、うううううっ・・・・!」
やっぱりシュピーゲルか!
ニーソクさんは悔しそうに肩を震わせた。どうやらもう否定しないみたい。
でもどうしてニーソクさんはこんなに必死に否定してたんだろう、何か問題でもあるのかな?
諦めたようにがっくりと肩を落としたニーソクさんに、今度こそ詳しい話を聞かせてもらおう。