なんとかなった?
もうちょっとだけ続くんじゃ。
今年はフォル編で終わりかなぁ・・・。
「こ、今度こそ助かったお?」
「うん、多分。
とにかく・・・今は私たちの勝ちだね。」
誰も居なくなった賭博場前。
安心したように私たちは大きなため息をついた。
その後はしばらく、二人とも何も言わずに呆けていた。
・・・なんだか、今日はすっっっっっごい疲れた・・・。
ニーソクもぐったりしているし、もう帰って休もう。そうしよう、うん。
そしてニーソクも落ち着いてきた頃、ゾロゾロと賭博場から人があふれ出てきた。
あれ、もしかして終わっちゃったの? うわぁ・・・少しでも出てくるのが遅かったら少しまずかったな。あんまり一般の人には見られたくない内容だったし。
そこでまた、さっき出会ったラガルトさんたちと偶然出くわした。
彼らは察しがいいのか私たちに何があったのか聞いてきて、私たちも簡単にだけど説明する。
勿論ミッドガルドには『送った』というだけで、どういう『目的で』だったのかは言わなかったけど。
そして私たちの話を聞いて、彼らは何か思うことがあるのか互いに頷き合った。
それが何かは分からないけど・・・義賊やってるらしいし、それに関係あるのかもな。
まぁ、うん・・・それがなんにせよ私たちには関係の無いことだ、気にしないでおこう。
私たちはラガルトさんたちに手を振って別れると、なるべく人につかないように宿への道を歩き始めた。
しばらく歩いて、私は疲れたように呟く。
「・・・まさか、転送魔法だけで勝てるとは思わなかったな・・・・・・キミタケに感謝だよ・・・。」
「キミタケ? 誰だお?」
「うーん・・・知らない方がいいこともあるよ。
それに多分、アイツら今地獄を見てるはずだから。」
「地獄ねぇ・・・。でもま、アイツらにはお似合いだお。
ただあの黒服さんたちも巻き込まれて・・・ちょっと可哀想だったかお?」
しょんぼりしながらニーソクは言った。
うーん・・・確かにアイツらは貴族たちに雇われてただけような気はするけど・・・。
「あの黒服たちは身のこなしからして相当な実力者だったと思う。
多分彼らもまた、後ろ暗いことしてたんだろうね。・・・暗殺者とかだったりして。」
「うーん暗殺者かー。確かに・・・ま、言われてみれば似合う気はするお。」
しょんぼりした顔から一転、ぱぁっと明るい顔になって笑った。
やっぱりニーソクも男の子なんだし、暗殺者は好きなのかな?
でも暗殺者、かぁ・・・。
今まで本で読んだ者も、中に入って出会ったことがある者も、皆総じて感情的じゃなくて、いつも冷静で冷たいヤツだったけど・・・。
「・・・それでも戸惑ったりはするはずさ。
特に、自分の理解の及ばない状況ではね・・・。」
「・・・・・・・・本当に、どこに飛ばしたんだお?」
ふっ、と嘲るように呟き笑うと、ニーソクは心底不思議そうに私を覗き込んで聞いてきた。
うっ・・・あー、うん。まぁ気になっちゃうよね・・・。
「うー・・・・・・・それ聞いたこと、後悔しないでよ?
ミッドガルドに飛ばしたんだよ。」
「ミッドガルド? フォルセティさんの故郷だおね?
そういえばさっきの義賊さんたちは『化け物の街』とか言ってたけど・・・?」
「あー、それは本当にビックリした。
まさかこんなに早く噂になってるとはねぇ。まぁ今まで何回か騎士達が来てたから、幽霊だけは見てたんだろうけど。」
「幽霊!?
あっそういえばフォルセティさん、前にそんなこと言ってたけど・・・あれ本当だったのかお!?」
「もちろんさぁ。
・・・えっ、まさか信じてなかったの!?」
「当たり前だお!」
・・・・・・・・冷静に考えれば、そりゃそうか・・・・。
「とっ、とにかく!
前は幽霊だけだったんだけど、この前そこに屍人が仲間入りしたんだよ。
まぁ、前から縁はあったんだけど・・・ミッドガルドに住み始めたのはこの前からなんだよね。」
「うわぁ、想像したくないわぁ・・・。
幽霊と屍人が暮らす、今はもう寂れた街って・・・ん? 屍人?
・・・あっ(察し)」
そこまで言って、何かに気づいたようにニーソクの顔色が悪くなる。
まぁ、そんな化け物が暮らす街に生きてる人間を送ったらどうなるか、なんて想像に容易いもんね。
「それで多分大正解だと思うよ。
でも違うとすれば・・・アイツら多分、まだ生きたまま食われてると思う。生きたまま腕とか足をもがれて、目の前で自分の体を喰われてるのを見せ付けられてるんだろうよ。キミタケの話じゃ、そういうのが好きな屍人も多いらしいし。」
「・・・・・・聞かなきゃよかったお。」
げっそりした顔でニーソクが吐き捨てた。むぅ、だから言ったのに。
それより今自分で言ってて思ったけど・・・・・・これ下手な拷問より全然ツライよね・・・。
気がつくと、私もげっそりした顔になっていた。
頭を抱えて思う・・・正直、やりすぎたかもしれないと・・・・・!
・・・・ごめん。
次からはちゃんと殺してから送ってやろう。そう心に決めて私は改めて前を向いた。
宿へはまだ少し距離がある。
ここから路地裏に入って行こうとも思ったけど・・・ほら、暗い夜の路地裏って良いイメージがないじゃない?
面倒ごとになっても困るし、なによりそこで迷っても困るしね。仕方なく私たちは大通りを通って行くことにした。
しかしその心配とは裏腹に、大通りはぽつんぽつんと人が居る程度で、もう堂々と歩いていても人目に付くことはなかった。なんだよもう!




