じこはおこるさ
事故はーー起きるもーのーさー♪
正直、別に馬や竜でもよかったんだけど・・・(後書きに続きます)
「それじゃ二人には、まずコレを渡しておこう。」
フォルがそう言うと、地図の上に3つの薄い長方形の箱みたいなのが現れた。
フォルはそれを手にとって1つずつ僕らに寄越してくる。
僕には赤いの、バルには黒いの、そしてフォルは青いのを・・・って、なんだろこれ?
「携帯。キミタケの居た世界にあるモノだよ。」
「・・・??? これ、何に使うの?」
「えっと確か・・・離れていても連絡がとれるし、いろいろ調べられるんだってさ。
私もよく分かってないし、とりあえず図書館ロールしよう? 成功すれば一発で全部理解するからさ。」
本はここにあるから成功率倍増で。
そう言ってフォルは腰にとめていた本を取り出して地図の上に置いた。僕らの目の前にそれぞれ2つの小さな青いダイスが現れる。
僕らが今やろうとしている『図書館ロール』っていうのはさっき言った彼女の魔法の一つで、今地面に置かれている本『クトゥルフ神話TRPG ルールブック』の魔法。
いちいちダイスロールをしなきゃいけないのが面倒だけど、成功すればかなりの効果が得られる。
あ。ちなみにフォルの腰に巻かれているベルトには、本の厚さにもよるけど最大2冊まで本がとめられるらしい。いつもルルブをとめてるから、自由に変えれるのは実質1つだけって感じになるのかな。
さて説明もそこそこに、僕らはそのダイスを適当に放り投げる。
図書館
フォルセティ(90)・・・出目03 クリティカル
アル (30)・・・出目30 いち足りた
バルフ (70)・・・出目25 成功
うわっ、僕の確立低すぎ・・・?
でもとにかく成功。頭の中に情報が流れ込んでくるような感覚に襲われる。
それにちょっとクラッとしたけど、コレがどういうものなのか、どう使うものなのかは理解できた。
なるほど、科学ってすごいし便利なんだけど・・・。
「でも魔法使ったほうが早くない?」
「・・・そう言うなって。これでも便利なんだよ? いろいろと。」
「それにお前は魔法使えないだろうが。」
「うっ!」
バルに痛いところをつかれてしまった。そう、この中では僕だけが魔法使えない。
フォルが言うには、僕でもレベルが上がれば使えるようになるらしいけど・・・うぅ、なんだか疎外感・・・。
僕がちょっと拗ねていると、相変わらずフォルは笑いながら話し始める。
「もともとはキミタケとの連絡用に出したんだけど、丁度いいから私たちも使おうと思ってさ。
・・・さて使い方を理解したところでこの先に行く方法ですが。」
あ、そういえばメインはそっちだったね。
フォルが草原の方を向くと、ちょっと先に一台の車が現れる。・・・おや?
「とりあえず車使ってみようと思う。」
うん。この世界には標識も速度制限もないもんね、爆走出来ちゃうよね。
って・・・・・・いやいやいや!? えっ!?
「それこそ魔法使えばいいんじゃないかな!?」
「出来ればそうしたいんだけど、今回それは無理なんだよねー。
私たちは誰一人としてスヴァルトアルファヘイムに行ったことがないからなぁ。」
フォルはちょっと困ったように腕を組んで考えるしぐさをした。
えっ、それじゃだめなの? どうして?
頭に疑問符を浮かべているとバルが補足説明をしてくれた。
「移動系の魔法は、たいてい一度行ったことがある街にしか飛べないからな。」
「えっ、そうなの?」
移動魔法なのに一度行ったことがある場所にしか行けないなんて・・・。
「・・・意外と不便なんだね・・・。」
「と、思うじゃん? でも結構役に立つんだなコレが。
今でもミッドガルドにはいつでも戻れるし、アル君だって勇者してれば結構使うことになってたはずだよ?」
そう言ったフォルはなぜか得意げな顔をしていた。
なんでだろう、僕が絶対使っていたって自信があるんだろうか。
うーん・・・なんだかイマイチよくわかんないけど、そういうものなの?
頭にちょっと疑問は残ったけど、まぁ仕方ないのかな?
僕は少し考えたけど、「うん。」と呟き顔を上げる。
それを見たフォルはこれ以上反対がないと悟ると変わらない笑顔のままパンッと手を叩く。
「よしっ! それじゃ、行ってみようか!
いやー、こうでもしないとやる機会なかったんだよね!
・・・大丈夫だって、この草原人っ子一人いなそうだし!」
あれなんでかな? 今のでフラグ立った気がする。
☆
・・・さて、もうお察しでしょうが。
その後車を全力で飛ばすこと約2時間、僕らはフォルの運転でスヴァルトアルファヘイムまで辿りついた。
『この草原には人っ子一人いない。』
フォルはそう思っていて、うん・・・まぁ確かに誰もいなかったんだ。
街が見えるまでは。
街が見えたあたりで件の『白い人のような何か』さんが急に現れたんだ。
多分、街から走って出てきたんだと思う。
そしてフォルは慌ててブレーキを踏んだ・・・けど間に合わず、彼は全力疾走していた車は彼に直撃。
彼の体は吹っ飛び、そのまま血を吐き出して倒れてしまった・・・。
で、冒頭に戻るわけです。
僕に言われて、白い人に応急処置をしながらフォルが呟く。
「・・・・・まあ自信過剰だと集中力なんて大概散漫になっちゃうからね!」
「ドヤ顔で言ってる場合か!」
僕はぺしっとフォルの頭を叩いた。
☆
・・・その後、魔法のおかげで彼はなんとか一命を取り留めることが出来た。
でも目は覚めなかったから、とても人とは思えない白い彼はとりあえずバルが背負って街へ入ることにした。あと例の車は消した。
「これで証拠は消えたね。」
「いや、そもそもこの世界に車って無いんだよね?」
とにかく、どこかに彼を寝かせられる場所があればいいんだけど・・・・・宿屋は開いてるかな?
「まあ自信過剰だと集中力なんて大概散漫になっちゃうからね♪」
ってネタがやりたかっただけです。ごめんニーソク。
あ、ニーソクってのは件の白い人のことです。
・・・これでもう外見イメージは沸いたよね?
それと携帯は電波ないと使えないとかそんな細かいことは気にしない。魔法というチートがある以上どうとでもなるのです多分。