貴族たちの復讐・・・えっ?
フォルが持ってる本『運命の少女』では時間を操ることが出来ます。
ただあまり強くは出来ません。ほんの少しの間なら操れる程度。
「お待たせしました。全部で150万円になります!」
受付のお姉さんは、にこやかにドサッと目の前に大きく膨らんだ袋を3つ置いた。
・・・あらぁー? 意外とすんなり換金できちゃったよ? いや全然いいんだけどさ?
しっかし5000円が150万って・・・えっと・・・300倍か。
うわぁ、これは流石に引いちゃうわぁ・・・。
私とニーソクは「あ、あはははは・・・ありがとうございます」と、引きつった笑みを浮かべながらそれを受け取った。・・・うおぉ・・・お、重い・・・重すぎる・・・ッ!
くっ、これは流石に転送魔法を使わざるを得ない! この姿で魔法はあんまり使いたくないんだけど・・・仕方ない!
私がその袋に意識を集中させると袋は一瞬で消えてしまった。直後に「えぇっ!?」という驚きの声が聞こえたけど気にしない。どうせニーソクとお姉さんたちだろう。
『ほら行きますよカストール。帰りましょう?』
「えっ、ちょっ、待っ・・・ふ、袋は!?」
『今頃宿についてるはずです。ほら、行きますよー!』
「宿って・・・あぁっ、ちょっと待ってってば!」
少し呆れたような顔で先を歩く私にニーソクは小走りでついてきた。
そしてある意味予想通りだったけど・・・入り口を出たら、さっきボロ負けしたバカ貴族の皆様が立っていた。
私たちは揃って嫌な顔をする。
「「うげっ・・・。」」
「よぉ、やっとお出ましか?」
『あー・・・・・・あら、さっきのみなさんがお揃いで・・・なんの御用でしょう?』
「はっ! よく言うぜ。
アンタら、まさか分かってねぇワケじゃねぇんだろ?」
『・・・・・さっきとは随分態度が違いますね。負けたからでしょうか?
ですが私たちはあまり騒ぎを起こしたくはありません。さっさと帰ってくだされば、見なかったことにいたしますが? あなた方は貴族なのでしょう?』
「っるせぇ! 俺達はなぁ、お前みてぇなバカでストレス発散してんだ。
しかもそれを売ればまた結構な金になる。今更止められるわけねぇんだよ!」
『・・・さっきの人たちの話は本当だったのか・・・コイツら、マジで屑なんだな。』
『しかも帰っては下さらないご様子。
イカサマしてたのにあれだけ負けて、さらに逆恨みですか・・・もはやかける言葉も思いつきませんね。バカなのは一体どちらでしょう?』
・・・・・・なんて、軽ーく言っててもやっぱり状況は私達の方が悪いな。
今こいつらと肉弾戦になったら勝ち目はない・・・私が今持ってる本は戦闘用じゃないし・・・。
そんな私たちの会話にさらに苛立ったのか、彼らは揃ってさらに顔を怖くして叫ぶ。
「こっの・・・! てめぇら俺達をバカにすんじゃねぇ!
おいッお前ら出て来い!! コイツらをぶっ殺す!!」
中央にいた一人がそう叫ぶと、周りからワラワラと黒服の奴らが現れた。
うわっ!? か、かなりの人数だ! いろいろとヤバいッ!
「女の方は捕まえて遊ぶつもりだったが・・・もういい! どっちも殺っちまえ!
できるだけ派手になぁっ!!」
「「------ッ!!」」
ヤツがそう叫んだ瞬間、黒服たちが私たちに向かって一斉に襲い掛かってきた!
くっ・・・やばい、間に合ってくれ!
「「「「「・・・・・・・・・・・・・!!」」」」」
思わず私は目をぎゅっと強く閉じてしまっていた。だけどいつまでもアイツらの攻撃が届かない。
落ち着いてみると、周りの風は止み、音も何も聞こえない・・・明らかに不自然だ。
私は閉じていた目を恐る恐る開けてみる。
すると黒服たちは私たちに飛びかかったまま、空中に残っていた。
・・・まるで『世界の時間が止まってしまった』ように。
あー・・・よかった、間に合ったのか・・・。
ほっと一安心していると、隣で「はぁーーー」と大きく息を吐いてニーソクが地面にへたりこんだ。
「た、助かった・・・。」
「・・・いや、残念だけどまだ助かってはないぞ? とにかく早くこの状況をなんとかしないと・・・。
この魔法はあまり長く持たないし、効いてる範囲も狭いんだ。」
アイツらやたらと良い身のこなしだったし、本当にヤバい奴らなんだろう。このまま街に逃げたってすぐ追いつかれてしまいそうだ。
逃げられないんなら倒すしかないんだけど・・・・・・・・・んー・・・あっ、そうだ!
一人だけなんとかしてくれそうな心当たりができた。
とりあえず電話掛けてみよう。
プルルルル・・・・
『(ピッ)・・・・・・む、なんだ意外と早かったな。早速何かあったのか?』
「うん、実はちょっと面倒なことになっちゃって。
とりあえずそっちに何人か送ろうと思うんだけど、大丈夫かな?」
『もちろんだ、なんせ数が多いからな。
・・・さて、どれくらいだ?』
「うーん・・・黒服のが10・・・いや15くらい。貴族野朗が3人だな。
貴族野朗はたいしたこと無いけど、黒服は動きがすごく良いから気をつけてね。
それじゃとりあえず全員中央広場あたりに送っちゃうけど・・・後は任せて平気?」
『案ずるな。我らとて神話生物、人間などに劣りはしない。
彼らがいくらすばやい身のこなしだろうがなんだろうが、我らにかかれば何の問題ない事だ。・・・だが、そちらであまり無理はしないようにな。』
「うん。大丈夫、分かってる。
それじゃーね! ありがとね、キミタケ。」




