これから一緒に暮らしましょう!
女の子に案内されて路地裏を進んでいく。
少し歩いて着いたのは小さな家だった。なんていうか、隠れ家みたいだなぁ。
「ここじゃ。入るぞ。」
女の子は家のドアを開けて中に入っていく。
それに続いて僕も入る、中は意外と広かった。
こんな路地裏でもやっぱり貴族街、設備は伊達じゃないみたいだね。
そしてリビングに通されて、二人でそこにあったソファに座る。
すごい、フカフカだ・・・!
ちょっと感動していると、奥から一人の女の人が現れた。
「あっ、姫様! いったいどこに行っておられたのですか!?」
「むっ・・・す、すまむ。」
女の人は僕らに近づいて、怒ったように言った。
女の子は少し、しゅんとしてしまう。
・・・・・・・・えっ、姫様?
一瞬あのトラウマが頭をよぎってしまう。ど、どういうことなの・・・。
「あら、そちらの方は?」
「そこのは私をさっき騎士たちから救ってくれた勇者じゃ。丁重にもてなすがよいぞ?」
「あら・・・まさか姫様、騎士たちに目を付けられるようなことをなさったので?」
「ひうっ!? ち、違うぞ!?
ただちょっと赤髪に目を付けられただけで・・・」
「・・・・・だから危ないと言っているのです! もう、何度目ですか!?」
「ひぅっ・・・」
怒っている女の人の顔がどんどん怖くなっていく。
なんというか彼女、後ろに黒いオーラがあるというか・・・うぅ、正直僕も泣きそうだ。
そして、いよいよ女の子は涙目になってしまった。
それを見て女の人は大きくため息をつくと、僕に向かって申し訳なさそうに謝った。
「申し訳ありません。姫様がご迷惑をおかけしたようで・・・。」
「アッ、イエ。ダイジョウブデス。」
「・・・・・あら、随分カタコトなのでございますね?
もしや異国の方でしょうか? その赤髪もそのせいなのでしょうか・・・?」
半分くらいあってるから怖い。
「いやその・・・すいません、少し緊張? してしまって・・・。
えっとあの、大丈夫です。大したことはしていませんし。」
「あら、そうでしたか。
本当にすみませんでした。ですが、そう言っていただけると助かります。」
女の人はそう言って微笑んだ。
そこにさっき感じた黒いオーラはないけど、代わりに大人の魅力を感じた。
あぁなんだ、笑うと綺麗な人なんだなぁ。
少し落ち着いて彼女を観察してみる。
さっきまで怒っていた彼女は、短い白髪に青色のメッシュが入ったような髪。
そしてやたらと肌の露出が多い服を着ていた。
ちなみに隣にいる女の子はぐすっと鼻を啜って泣いている。
長い赤髪は僕と同じ夕焼けのような色。
着ているのはそれなりに豪華なワンピースで、頭には可愛らしい花の髪飾りをつけていた。
えっと、さっきの話じゃこの子がこの世界のお姫様・・・なんだよね?
「あの、この子がお姫様ってどういうことですか?」
「あら? まさかご存知なかったので?」
「ぐすっ・・・当然じゃ。あちらでは、もう私は死んでることになってるようじゃからの。」
「なっ、なんですって!? そんな・・・っ!」
「えっ? もう死んだことになっている・・・?」
うーん、どういうことなの?
首を傾げていると、女の子は目をゴシゴシこすってキリッとした顔で話し始めた。
「私はこの国の第一皇女、コモンマロウ! マロウと呼ぶがいいぞ!
そして我らが反乱軍のリーダーなのじゃ!」
「は、反乱軍・・・?」
なにゆえ皇女様が反乱を起こす必要が?
あっ、そういえば・・・死んだことにされているって、それにこんな路地裏の隠れ家・・・。
あれなんだか嫌な予感がしてきたぞ?
女の子・・・あっコモンマロウ、マロウでいいんだっけ・・・は僕をソファの上に押し倒すと、体の上に乗っかって必死そうな顔で頼んできた。
「頼む、赤髪の勇者よ!
私たちと共にこの国を救ってはくれぬか!?」
「はいっ!?」
「あっ、姫様。
この方はもういろいろ知ってしまわれましたので、嫌でも帰しません。」
「ファッ!?」
「むっ、そうなのか? ならば都合がいい。
これからよろしく頼むぞ!」
「えっ!?」
僕まだ何も言ってないんだけど!?
戸惑う僕を差し置いて、二人の女の子たちはニコッとそれはいい笑顔を浮かべていたのだった。




