ルートA:大通り
ヴァルムヘイム組
別名・元引きこもりチームです。フォル視点です。
「待ちなさい、ニーソクーーーッ!!」
後ろから、氷漬けにされた女の子達を通り越してたくさんの女の子達が追ってくる。
ちなみに前からの追っ手もさっきので凍ってしまった。だから今はとりあえず居なくなっているけど、またいつか来るだろう。
「うへぇ、すごいね。逞しいね!」
「いやいや感心してる場合じゃないお!? どこかに隠れないとまずいお!」
「うーん、それはそうなんだけど。」
さっきも言ったけど、私はこの街のことについて何も知らないんだよねぇ。
だから『どこかに隠れる』って言っても、どこがいいのかさっぱりだし・・・。
「ニーソク、どこかいい隠れ場所とかないの?」
「えっ、そ、そうだおね・・・。」
ニーソクは顎に手を当てて考え始める。
だけど、ここでついに前からの追っ手もやって来た! しかも結構数が多い!
「・・・・・・まずい! ニーソク、補助魔法かけてくれ!」
「えっえっ!? あっ、うわっ前からも来たのかお! でも何を使えばいいお!?」
「えーっと・・・」
私は走りながら周りを見る。
やっぱりここは商業地区というだけあって特徴的な建物が多い。
とても高い建物や、よくわかんない看板が付いてるもの、あと屋根や建物自体の形が変わっていたり・・・うーん、客引きはよさそうだね!
でもそうだなぁ、これなら・・・。
「・・・飛翔魔法! とりあえず高く跳べるヤツをくれ!」
「分かったお!
慈愛に満ちる大地よ、彼の者を束縛せし枷を解放せ!」
ニーソクが詠唱すると、急に体が軽くなったような感覚がくる。
よし、これで跳べるね!
私はニーソクを両手で抱きしめるように掴むと、そのまま高く飛び上がって屋根の上に着地した。
下から驚いたように女の子達が叫ぶ。
「あっ、コラーーッ! 降りてきなさーーい!」
「逃げるなんてずるいわよーーッ!」
「そりゃそんな大人数で来られたら逃げるに決まってる、だろっ!」
言いながら私はさらに屋根の上を跳んで逃げていく。
「くっ・・・逃げられた!」
「二人は工業区の方に跳んで行ったか、急がないと!」
「・・・・・っていうか、アンタ誰よ? ニーソクのなんなのよ?」
「はぁ? 私はアイツの彼女よ。アンタこそなんなのよ!?」
「彼女? ・・・あはははは笑えちゃいますねぇ!
あの人には既に私という正妻がいるというのに!」
「はあああああ!?? アンタたち何言ってんのよ!
あいつは私のものなんだからね!?」
あれ? なんか言い争いを始めちゃったよ?
しかも、ときどきドゴォッとかバギッっていう何かを壊す音も聞こえてくるんだけどコレって・・・。
「・・・・・人気者だね、ニーソク。」
「嬉しくないお・・・。」
私が少し呆れたように言うと、ニーソクは困ったように返した。
まぁとにかく、コレでしばらくは潰し合いになるかな・・・って、そうだった。
「ニーソク、結局いい隠れ場所は思いついた?」
「えっ・・・うーん・・・とりあえず、おいらの家に行かないかお?
本もたくさんあるし、まさかアイツらもおいらの家に戻るなんて思わないと思うお?」
「ニーソクの家? うーん・・・まぁ賭けだけど、確かに面白そうではあるかな。
・・・よしっ、行ってみよう! ガイドよろしく!」
「了解だお! とりあえず、そのまま前の屋根を跳んでいくお!」
「おっしゃ!」
私はニーソクのガイドで屋根の上を飛んでいく。
街の人の視線は私たちに釘付けだった。