迎撃準備
別世界編に入ってから2000文字超えるのが普通になりました。
今回も3000文字近いです。長いよ!
あと次の話は今回の話の要約版だよ! これ見なくてもいいよ!
「うへぇ、私狙いとか勘弁してくれよ・・・。」
「青髪さんなんてまだいいお。おいらなんか・・・。」
げっそりしながら二人が呟いた。
・・・まぁ気持ちは分かるけども、今はとにかく攻めてきた女の子たちをなんとかしないとだよ!
とか言ってやろうと思ったけど、それは二人もわかっているらしいかった。
「・・・仕方ない、こうなったら迎え撃とう!
さぁお前ら、欲しいのを言いんしゃい!」
そして半ばやけくそ気味に、フォルは腰にとめてた本を開いて言う。
うーん、欲しいものか・・・。それって何で女の子を倒すかってことだよな・・・。
どうしようって考え始めたら、バルが駆け込んできた従業員さんに訊ねていた。
「・・・なぁ、そいつら数はどれくらいいるんだ?」
あ、そうだ・・・確かにそれ聞いてなかったや。大事なのに。
従業員さんは頭に手をあて、思い出すようにして言った。
「えーっと・・・。店の周りには10人くらいです。でも他に街にもいると考えれば・・・多分50、いや100はいるかと。」
「100ぅ!?」
「多すぎるお!?」
それを聞いて僕とニーソクさんが悲鳴を上げる。
ひゃ、100って・・・!? いや、でも街の人口を考えれば少ない方か・・・!
僕らが怯える一方、バルとフォルそれとおじさんの三人は冷静だった。
三人は少し考え込み始めて、少ししてからフォルが頷いて話し始める。
「私とバルは魔法使ったほうがよさそうだね。でも一応なんか持っておこうか?」
「そうだな、だったら俺は銃で頼む。」
「・・・おや珍しい。てっきり近接武器でも頼むかと思ってたんだけど。
だったらコレを、デリンジャーだよ。装弾数は2発・・・って意外と少ないな、じゃあ代えの銃弾も10発あげようか。」
そう言ってフォルはバルに出した銃と銃弾が入った箱を投げ渡す、かなり小型の銃なんだなぁ。
そしてなんと、それらはバルが受け取るや否や一瞬で消えてしまう。
えっ、どうして!?
その光景に驚いた僕らを代表しておじさんが聞く。
「お、おいどういうことだ? 銃が一瞬で消えちまったぞ!?」
「ん? 気にするな。ただの時空魔法だ。」
「そんな高度な魔法がホイホイ使えるのかお!?
それに青髪さん・・・あー、お姉さんの方も何もないところから銃出すなんて・・・。やっぱり青髪持ってる人ってすごいんだおね・・・。」
二人は感心したようにため息をついた。
そういえばバルって時空魔法使えたんだったな・・・。
・・・ちなみにフォルも転送魔法は使える。なんでも、たくさんの本を持ち運ぶのは大変だったから覚えたそうだ。
確かに前に遺体を城から墓場まで転送してたし、これは別に本が無くても使えるみたいだね。
そしておじさんたちとニーソクさんは頷き合って、真剣な顔でフォルに頼んだ。
「なぁ譲ちゃん、俺たちにも何か武器をくれねぇか?
お前さんたちだけじゃなく俺の店も襲われてるってのに、何も出来ないのはごめんだからな。」
「お、おいらだって! これでも補助魔法だけなら使えるお!?」
「・・・! 二人とも・・・!」
フォルは一瞬意外そうに驚くと、すぐにニコッと笑って「もちろん」と答えた。
「じゃあおじさんには・・・コレ、かな? ワルサーP38 アンクルスペシャル。いわゆる万能銃だね。
サイレンサーやマズルブレーキの装着、ダーツ弾を撃てるようにカスタムされているんだ。他にも延長銃身・スコープ・金属パイプ銃床を装着し狙撃ライフルに変形させることもできる。しかもそれらの取り付けも簡単というスグレモノだよ!
・・・というわけでそれらカスタマイズパーツとホルスターも渡しておこう。大丈夫だって、結構小型だから。
あとこの銃の装弾数は8発。延長マガジン使えば15発までいけるよ。」
「おぅ、ありがとよ・・・ってなんかすげぇなコレ。俺に使えるのか・・・?」
「ニーソクには・・・うーん、金属バッドでいいか。はい。」
「・・・なんか扱いに差を感じるけど・・・とにかくサポート系はおいらに任せるお!」
受け取った二人は「よっし!」と気合を入れた。
それじゃあ僕はどうしようか。あんまり女の子相手に傷つけたくはないんだけど・・・。
「あと勇者君にはコレ。鞄と鋼の剣。」
「えっ、僕のも決定? ・・・って前のとは随分違うんだね?」
そう悩んでいたらフォルが笑顔で剣と鞄を投げつけてきた。
フォルが寄越してきた鞄は革で出来たショルダーバッグだ。
・・・まぁそれはいいとして、前は神剣だったのに今回は鋼の剣ってどうしてだろう?
頭に疑問符を浮かべていると、続けて赤いブックカバーが掛かった本と財布も投げられる。うおっとと・・・。
「ミッドガルドは気にしなかったけど、この街の中で神剣なんか使ったらすっごい目立っちゃうからね。
あと一応お金と携帯・・・それとその本もその中に入れておいてよ。私たちはいつでも出せるけど、君はそうじゃないんだしね。」
「あ、なるほどそういうことか。分かった、そうしとくよ。
それとこの本は・・・もしかして?」
「うん。アースガルド冒険譚。流石に血まみれのままだと見栄え悪いからね。一応カバーだけ掛けといたんだ、それを外すと呪いの本スタイルになるよ。
・・・それじゃ、あとは私の武器・・・まぁナイフあたりでいいかな。みんなは他に欲しいものはある?」
フォルは出したナイフを腰のベルトに差しながら僕らを見る。
そしてみんなもう何も言わないことを確認すると、ルルブを閉じて腰に止めた。
「・・・ないみたいだね、じゃあこれで準備は完了かな?」
「あぁ。だが作戦も考えたほうがいいだろう。」
「そうだお! このまま出たらおいらたち全員捕まっちまうお!」
「じゃあ全員でどこかに逃げるのか? 宿にも誰か居ないと駄目だろうな。」
「おっし、じゃあ俺が残るか。一応俺が店主だし、従業員も心配だからな。」
「分かった。じゃあ私たち三人はどっかに逃げようか。・・・といっても私たちは街について詳しくないから、適当に走り回ることになるだろうけど。」
「うっ・・・り、了解だお! 頑張るお!」
「おぅ! 何かあったら戻ってきてもいいからなお前ら!」
おじさんとニーソクさんは意気込んで返事をした。
気合十分みたいだね。頼りになりそうでなにより・・・・って、そうだった!
僕はフォルとバルに指差して大声で釘を刺す。
「二人とも! 今回は相手が相手なんだから殺しちゃダメだからね!」
「大丈夫だって! その辺はちゃんと考えてあるから!」
「まぁ、あいつら次第だけどな。基本的には俺もやるつもりはないぞ?」
それにフォルとバルは笑って答える。
でもなんでだろう、やっぱり不安だ・・・。
階段を降りて外に出るその前に、フォルが従業員さんにお気に入りの本を持ってくるように頼んだ。
その従業員さんは急いでカウンターに向かってその本を取ってきてくれて、フォルはその本を一瞥するとニヤッと笑いながらお礼を言って、そのまま宿の扉を蹴り開ける。
扉の向こうには女の子達が大勢いた。・・・さぁ、頑張るぞ!