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最新兵器の未来を消せ!

最新兵器と戦うヤヤ

「随分と辺鄙な所ね」

 辺りを見渡す芽衣子が言うとおり、周りには、何も無かった。

「当然だ。ここは、武器商人の秘密実験場だぞ」

 雷斗が頭を掻く。

「何を緊張しているの?」

 不思議そうな顔をする良美に沈痛な表情を浮かべる雷斗。

「逆に訊きたいんだが、どうしてお前は、緊張をしていないんだ?」

 良美は、朗らかに答える。

「ただの武器工場でしょ? 軍事基地に比べれば大したこと無いじゃん」

 芽衣子が驚く。

「軍事基地に行った事があるんですか?」

 鏡が遠い目をする。

「軍事基地くらいなら何度か行った事がある筈。ついでに言えばアメリカの秘密軍事施設にも潜入した事もある。はっきり言って、この程度の場所なら日常茶飯事なんでしょうね」

「絶対に危機意識がおかしくなってるぞ!」

 雷斗の突っ込みに較が苦笑する。

「そういう貴方達は、地球で一番危険な生物不発弾のあちきの傍に居るって自覚ある?」

「そんな、ヤヤちゃんは、良い子じゃない」

 微笑む芽衣子に雷斗と鏡が大きなため息を吐くのであった。

「とにかく、今回は、ここの最新兵器がノイズなんだよね?」

 良美の言葉に較がうなづく。

「そうだよ。そして、その最新兵器が無力な事を知らしめてからホワイトファングで撃ち消す」

「だから正面からの突入なのか?」

 雷斗の呟きに鏡が芽衣子を抱き寄せる。

「ここからは、一般人は、危険なので後ろで保護します」

「無理しないでね」

 芽衣子が心配そうに声をかける。

「あたしは、残るからね」

 強固に主張する良美を担ぎ上げる雷斗。

「はいはい、一般人は、後方で見学としましょうか」

「任せたよ」

 較が歩みだす。

「放せ!」

 もがく良美を担いだまま雷斗が後退する中、戦車が較に迫ってくる。

 較に迫る戦車の中では、若い砲手が戸惑っていた。

「本当にあんな子供を撃つのですか?」

 車長が怒鳴る。

「馬鹿が! 相手は、人の外に居る化け物! 一瞬でも気を抜けば……」

 最後まで言うことが出来なかった。

 較が既に戦車にとりついていたのだ。

 止まった戦車の上に立ち上がり、両手を広げる。

『インドラキャノン』

 両手から放たれた電撃が戦車の装甲を伝わり制御機器を無効化し、乗員を感電させる。

『あれは、正真正銘の化け物だ!』

 周囲の戦車が砲撃を開始する。

『ナーガ』

 地面が盛り上がり砲弾を防ぐ中、較が腕を振り下ろす。

『ヘルコンドル』

 カマイタチが容赦なく戦車のキャタピラを切り裂く。

 動けなくなった戦車の死角からゆっくりと近づく較。

「来るな化け物!」

 乗員の一人が狂気のままに手榴弾を投げつける。

 手榴弾は、較の傍で爆発した。

「油断しやがった。いくらなんでも直撃を食らえば……」

 爆炎の中でも較は、平然と歩いていた。

「嘘だろう! こんな化け物と戦えるか!」

 逃げ出す乗員達を見て雷斗が頭をかく。

「前から疑問に思っていたんだが、何でお前らは、通常兵器に対してここまで絶対的な戦闘力をもてるんだ?」

「八刃の直系なら、物理法則に干渉する事が出来ます。物理法則に囚われている限り、それを無効化するのは、簡単なんですよ」

 鏡の答えに担がれていた良美が手を上げる。

「でも、前にヤヤが自分の父親でも戦闘機を相手にするのは、面倒だって言っていたよ」

 鏡が肩をすくめる。

「相手の命を失わずに倒すのが面倒なだけで、ダメージを食らうことは、そうそうありません。相手の命を考えなければ白風の長なら空母ごと来ても一時間もかからず全滅でしょうね」

「とことん人外だな」

 冷や汗を垂らす雷斗。

「でも、ヤヤちゃんは、最初の砲撃を敢えて防ぎました。あれは、きっと感電して動けない戦車の人達を護る為。優しい子って証明です」

 芽衣子の言葉に鏡が良美を見る。

「色々な出会いが良い方向に変えたんですよ」

 戦車が壊滅した所で巨大な砲台が出現する。

「おいおい、いくらなんでもあれは、不味いだろう!」

 雷斗が慌てる中、呆れ顔になる鏡。

「無駄な事を、どんなに強力な兵器でも物理法則に囚われている限り、効果は、無いだろう」

 発射される砲弾。

『アポロンビーム』

 較の指先から放たれた熱線が砲弾を誘爆させていく。

 その間に巨大なレールの様な物が展開されていく。

『待っていました。地上最強の攻撃力を持つものよ。八刃に物理兵器が効かないと言われているが、その限界点は、何処かな? これが我が研究室の秘密兵器、レールガンだ!』

 限界まで高速化した砲弾が較に迫る。

 較が肩をすくめる。

「あんたら、すごい勘違いしているよ。兵器というか戦いにとって一番大切な事は、威力の増幅じゃないんだよ『バシルーラハンド』」

 較は、片手でレールガンの砲弾を上空にそらした。

『馬鹿な! あれだけの質量を曲げるなど、あんな小さな体にどれだけのエネルギーを持っているといるのだ!』

 較は、右手を前に突き出す。

「相手に倒すのに必要なのは、威力じゃない。相手を理解する能力。あちきは、レールガンを曲げて無い。曲げたのは、空間の方。『ホワイトファング』」

 レールガンが白い光に塗りつぶされて消滅していく様子を見ながら鏡が言う。

「言っている事は、正しいんだが、あの圧倒的な攻撃力を見せられては、説得力が無いな」

「そうだよな、破壊跡の淵が見えないからな」

 雷斗がホワイトファングが抉った地面を恐る恐る見るのであった。

「大丈夫?」

 ぐったりしている良美を気遣う芽衣子。

「……大丈夫、いつもの事だから」

 弱々しい良美の言葉。

「大丈夫な訳ない。この所、ホワイトファングを連発している、肉体的にもかなりの負担が溜まっている筈」

 鏡の指摘に雷斗が眉をひそめる。

「よく解らないんだが、なぜヤヤがホワイトファングを撃つと良美の方にダメージがいくんだ」

 芽衣子が較を見る。

「そうですよね。撃ったヤヤちゃんは、平気そうにしているのに」

 鏡が真剣な顔をする。

「白風は、ホワイトファングの力の源である白牙様の肉体の一部をその体に取り込んだ人間の血族、その力にある程度の適用力がある。イメージ的に言えば、数十メートルが限界の観光用の潜水艇を千メートル対応の潜水艦が引っ張り、二千メートルに向かうような物です」

「誇張ありだよな?」

 雷斗の質問に戻ってきた較が言う。

「誇張どころかかなり控えめな表現だよ。さっきの例えだったらヨシは、良くて海上船だよ」

「でもそれだったら、そんな事をしたら、壊れてしまいますよ」

 芽衣子の当然の指摘に較がため息を吐く。

「八百刃様のお力もあるけど、そうならないのが奇跡なんだよ」

「そういう貴女だって、決してノーダメージでは、ありえない。それどころか、着実に浸食の危険度は、蓄積されている筈です」

 鏡の指摘に較が右手を見る。

「解ってるつもりだよ。それでも、力を使わないといけない時がある。それで良いんだよね?」

「当然!」

 顔色が悪いのに指を立てる良美であった。

 気が緩んだと思われた瞬間、敵の声がした。

『まだだ! 我々には、まだこれがある!』

 鏡が芽衣子と雷斗を連れ較の後ろに隠れる。

『ガルーダウイング』

 風の壁がそれの接近を阻む。

「何がどうした?」

 慌てる雷斗に較が舌打ちする。

「細菌兵器! こんな下らない物まで作ってたの!」

「ノイズが消えていますから、ノイズと関係ない、元からの悪意の産物ですね」

 鏡が冷たい目をする。

『流石の八刃も細菌兵器の前には、無力みたいだな!』

 勝ち誇る声に較が怒鳴る。

「ふざけないでと! 細菌兵器なんてばら撒いて、警備の人間まで巻き込むつもり!」

『残念ですが、彼らには、捨石になってもらいます』

 呻き声があちこちからあがり始める。

「鏡、どうにかならないの?」

 青褪めた芽衣子の言葉に鏡が悩む。

「抗体がある筈ですが、それを奪いに行くとなればこっちの守りが……」

 躊躇していると良美が力ない拳で較を殴った。

「どうせ、無かったリスクを考えて、無茶が出来ないとか考えているでしょ。絶対にあるから、あそこが居る人達が犠牲になる前に奪い取って来て!」

 較が複雑な表情を向けると鏡が抱き寄せている芽衣子を見た。

「あたしも頑張りますから、行ってください」

 そんな中、頭を掻きながら雷斗が言う。

「俺の心配なんて誰もしてないだろうが、ここで自分ひとりだけの命にみっともなく縋る人間じゃないぞ」

 苦笑する較。

「総意だね。絶対に奪いとってくるよ!」

「直ぐに戻ってきます!」

 鏡が影に消え、較が駆け出す。

『遅い今更、何をしても手遅れだ!』

「八刃を嘗めるな!」

 較が戦場を駆け抜ける。

『フェニックスロード!』

 較の通った後を炎が巻き起こっていく。

『熱でどうにかなるとでも思ったのか? そんな単純な物じゃないぞ』

 炎が巻き起こる中心で較が告げる。

「さっきも言ったよ、戦うには、相手を理解する必要があると。人間には、抗体が存在し、体に害があるものを排除する。細菌兵器は、それが敵わないだけの物。だったら、炎と共に送った気の力で人の抵抗力を強めてやれば、死を遠のけられる」

 さっきまで今にも死にそうだった人々の顔に多少の生気が戻っていく。

『そんな物は、時間稼ぎにしかならないな』

 余裕たっぷりの声に較が怒気をぶつける。

「そう、時間稼ぎ! 何度も言ってあげる、戦って相手を倒すって事に一番大切なのは、相手を知る事」

『この状況で、それが何を意味する……、細菌兵器を使う以上、必ず抗体を保有している。それを手に入れればこの状況を打破出来る。それが相手を知り、必要の一手を打つと言う事だ』

 声が途中から鏡の物に変わった。

『止めてくれ! ギャー、死ぬ死ぬ死ぬ! 抗体だったら、そこに……』

 悲鳴は、止まらないが影を通して較の手に抗体が届けられる。

「呑気に培養とかしてる暇が無いね」

 容器を粉砕して抗体を空中に撒き散らす。

『ラクシャミ』

 回復の力が抗体を一気に繁殖させて、最近を駆逐していくのであった。



 病院の隔離室。

「何であたし達が隔離されている訳?」

 暇そうにしている良美に雷斗がため息混じりに言う。

「細菌兵器を使われたんだ、それが広がらないようにする為だ」

「それにしても、あれは、やり過ぎだったんじゃないんですか?」

 芽衣子の言葉に較が手を横に振る。

「教訓を含めてあんくらいがちょうど良いんだよ」

「熱消毒だといって、あの周囲をアポロンの超高熱で焦土にするのは、やり過ぎです。もっと穏便な方法がありました」

 鏡の突っ込みに較がそっぽを向くのであった。

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