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殺気は怖い

さて、スミレと一緒に行くことになったのはいいが、これからどうするか。このままだとここで息絶えて野を歩く獣にご馳走を与えてしまうことになりかねない。


「ジュン?ここで突っ立ってるのもあれじゃし、まずは適当に歩かんか?」


とそこでスミレがそんな提案をしてきた。年上の俺より判断が早いな・・・。実によくできた娘である。


「それもそうだな。まずは適当に歩いて落ち着ける場所でもさがすか」


「うむ!そうと決まれば出発じゃっ!」


そうして俺とスミレはあても無いまま草原を歩くことにした。

歩き始めてから少し経って俺は気がついたことをスミレに聞いてみた。


「そう言えば、スミレって魔物と戦えるのか?」


そう、このことである。人間とほぼ変わらない姿と知能を持っているといっても彼女は魔物側の魔族である。しかも、その王なのだ。同種族を殺したりするのはやっぱり気が引けるのではと思ったのだが・・・


「ジュン・・・御主は妾を馬鹿にしてるのか!?妾は魔王じゃぞ!」


「そ、そうじゃなくてだな」


俺はさっき考えたことをスミレに話した。


「なんじゃ。そういうことは先に言うのじゃ。馬鹿ものが」


聞かなかったのはそっちだろっ!という言葉をなんとか飲み込む。話がこれ以上脱線したら嫌だからな。


「そ、それで実際のところどうなんだ?戦えるのか?」


「別に問題は無いぞ?むしろどんとこいって感じじゃ。」


どんとこいって・・・。それはそれで問題がある気がするんだが。


「でも、同種族の奴だぞ。殺したりもするんだぞ?」


「だから問題無いって言っておるじゃろ?だいたいあっちは殺す気で来てるんじゃ。だったらこちらも相応の覚悟で挑まなくては失礼というやつじゃろ」


「だが、しかし・・・」


ここまで言われてもなお俺は迷っていた。だって覚悟があるって言ってもまだ12歳の少女だぞ?そんな年齢の娘に同種族を殺させるのも忍びない。そのことを伝えると


「う~む、わからんやつじゃな・・・。じゃあ、何か?ジュンが12だとして同じ人間に殺す気で迫られた時、同じ種族というだけで殺されろというのか?」


「それは・・・」


多少極論ではあったが確かに彼女の言っていることは的を射ている。これは俺が折れるしかないか・・・


「わかったよ。だけど気分が悪くなったらすぐ言えよ?それが条件だ」


これだけは譲れない。殺して気分が悪くなっているのに戦わせることなどできない。


「まったくジュンは心配症じゃの~。でも心得たのじゃ。もし気分が悪くなったらすぐジュンに言う。これでよかろう?」


「OK。それでいい。」


そう言って頭を撫でる。なんか癖になりつつあるな。つい撫でてしまうのだ。


「や~め~る~の~じゃ~」


ふふ、顔を赤くしちゃって、かわいい奴め。十分堪能してから頭から手を離すと―――――――


「と、ところでジュン。さっきのお~けぃ~とはなんなのじゃ?」


と、そんなことを聞いてきた。そうか。なぜかこうやって日本語で通じていたからすっかり忘れていたが、ここは異世界なんだ。OKなんて言語な無いのか。


「ああ、OKっていうのは俺のいた国のわかったとかそういう意味の言葉だ」


まぁ、正確には俺の国の言葉では無いが、この際いいだろう。などと考えていると


「ジュンがいた国か?それは面白そうじゃっ。もっと詳しく話すのじゃ~」


俺のいた国・・・それを話すと別の世界から来たことを話さなくてはいけなくなる。


「駄目だ。今は落ち着けるところを探すのが先だろ?」


だがしかし、これから一緒に旅をするってことは俺が別の世界から来たってことも言っておいた方がいいのか?でも今言ってもスミレを混乱させるだけだし、どっか落ち着くところにでも付いたら話した方がいいんだろうか?


「そ、そうか・・・残念じゃ・・・」


などとそんなことを考えていると目に見えてシュンとしてしまったスミレがいるではないか。そんなスミレに俺はおもわず言ってしまった。


「ま、まぁ、詳しいことは、落ち着けるところについてからな」


これで言うことは確定してしまったか。甘いな俺も・・・。しかし、そう言うとスミレは


「うむ、お~けぃ~なのじゃっ!!えへへ、楽しみなのじゃ~」


そう言ってさっきとは一転にゃぱっと笑顔になって飛び跳ねている。飛び跳ねることで二つのテールもぴょこぴょこ跳ねている。か、かわいい。まぁ、いろいろあったがこの笑顔が見れただけでもお釣りが来るか。


そんなこんな話している内にどうやら結構な時間が経っていたようで、さっきまで何も見えなかったところにに煙が上がっているのが見えた。


「おいスミレ。」


煙が上がっているということは何かの集落があるかそれに近いものがあるってことだ。思わずスミレに確認をとる。


「うむ、妾もわかっておる。やっと休めるの~」


「結構歩いたからな。疲れてないか?」


そんなことを聞いてみると


「べ、別に疲れてなんかないのじゃ」


ツンデレっぽいな・・・。おっとそれはともかく疲れてないってのは嘘だろうな。そんな動揺した答えを聞けば嘘だとわかる。


「なあ、疲れてるなら。ちょっと休む――――――」


しかし俺はその言葉は最後まで言うことができなかった。


「ぐぎゃぎゃぎゅぎゅるぅ~」


無粋な声に邪魔されたからだ。って、この声はまさか・・・。そんな聞き覚えのある鳴き声に後ろを振り向く。すると予想通りあのゴブリンがそこにいるのが見えた。しかし、さっきのゴブリンと違う点を挙げるとすればその数が3体になっている点だろう。すっかり、失念していた。ゴブリンが1体でもいたのだからその仲間が周りにいたとしても不思議はないだろう。ここで俺はある気がかりに隣を見た。


「あ、あぁ・・・」


するとそこにはすっかり動揺してしまっているスミレがいた。まぁ、しょうがないことだと思う。いくら殺す覚悟があるといっても自分を殺すという本物の殺気を受けてしまえば、動揺もするだろう。俺は道場で慣れているからさほど問題は無いが、スミレは魔王とはいえ幼い女の子なのだ。だから・・・


「スミレ。後ろに下がってろ。」


そう言って前に出る。


「おい、お前らの仲間をころしたのは俺だぜ?ほら、かかってこいよ。」


「「「ぎゃあああああああっ」」」


知能が低いのかこのくらいの挑発で簡単に襲ってくる。というか言葉通じてるのか?これ。まぁ、馬鹿にされているってことは感じるのかもな。


「ぐぎゃあああ」


3体の中の1体が振り下ろした斧を避けて胸に掌底を放つ。肋骨が折れたのだろうボキボキっという音がして地に倒れる。


「「ぐぎゃっ!?」」


予想していなかったのか1体が秒殺されたのを見て2体が驚きの声をあげる。


そんな様子のゴブリンに今殺したゴブリンが持っていた。斧を拾って投げる。その斧の速さによけきれずゴブリンの頭に刺さり、2体目が絶命する。さて、最後の1体か・・・。

そんなことを考えていた時、俺の横を黒い玉が駆けていき最後のゴブリンに当たった。ゴブリンは5メートルほど飛ばされたあと動かなくなった。今のはスミレか?あまりの出来事に後ろを振り向くとこちらに手を向けて固まっているスミレの姿があった。


「今やったのは、スミレか?」


決まり切っていることだろうにそう聞いて見る


「う、うむ、最初はちょっと動揺してしまったようじゃが、もうだいじょぶなのじゃ」


もう、復活するとはメンタルが強い娘である。この殺気におびえてしまって2度としゃべれなくなる人だっていると聞くのに


「ほんとに大丈夫か?」


でもやっぱり少し心配になってしまう。


「くどいぞ、ジュン。わ、妾は大丈夫だと言っておるじゃろ」


はぁ、どこが大丈夫なんだよ・・・。肩が震えているじゃないか・・・。しかし、それを指摘しても意地になってしまうのは火を見るより明らかだろう。だったら今俺ができることは早く落ち着けるところに行ってスミレを休ませてやる事と―――


「な、なんじゃ。また頭を撫でるのかっ!?」


「違うよ」


そう言ってスミレをぎゅっと抱きしめてやる。道場の練習で立ち直れなくなりそうになった時よくやってもらった方法だ。


「怖くない。お前には俺が付いている。だから怖くないぞ」


抱きしめながらそう囁く、するととスミレは


「う~ぐすっひっく、うわ~~ん怖かったのじゃ~!」


そう言って泣きついてきた。やっと素直になったか・・・


「よしよし」


泣くほど無理しやがって子供は素直が1番だろ?


それから数分後泣きやんだスミレは


「ぐす、もう本当に大丈夫じゃ。いくぞ」


「もういいのか?胸ならまだいくらでも貸してやるぞ?」


そう茶化して聞いて見ると


「う、うるさいのじゃっ。このままでは日が暮れてしまうのじゃ。さっさと出発じゃっ」


真っ赤な顔でそういうスミレ。見れば肩の震えも止まったみたいで一安心だ。


「はいはい、わかったよ。じゃあ、行くか」


それから数時間後俺とスミレはレイジ村というところににいた。小さい村だから宿屋見たいなものは無かったが、村長が優しい人で行くあてが無いことを聞くと快く空家と食糧を分けてくれた。


そして夜、ベッドに座りながら自分の世界のことを話しをしようと思ったのだが・・・


「それでな俺の故郷のことなんだが、・・・スミレ?」


あんなに楽しみにしていたのに反応が無い。何故だと横を向けば


「く~、す~す~」


スミレは寝ていた。ちなみにツインテールは解いてある。それもそうか今日はいっぱいいろんなことがあったもんな。すぐ寝て当然か・・・

だけどベッド取られちまったな。まぁ、もとから譲るつもりだったからいいけどね。さて、では俺も床に布でも引いて寝ようと・・・


「うん?」


立ち上がろうとして気づいた。スミレが俺の上着の裾をぎゅっと握っていて立てないではないか・・・

スミレの手をどうやってはずそうか考えていると


「く~むにゃむにゃ、ジュン~えへへ」


ぐはっ、これは反則だろう・・・。これじゃあ、無理やりはずすことなんてできない。


「まったく。しょうがないな」


俺もここで一緒に寝ないとだめらしい。しかたない。もってくれよ~俺の理性!!ロリコンとか言うなよ!間違いを起しちまうくらいスミレはかわいいんだって。などと思っていた俺だが、ここで眠くなってきた。俺もしっかり疲れていたらしい。・・・寝るか。


「お休み。スミレ」


そう言って俺の意識は夢の中に落ちて行った。

まず最初に、お気に入りしていただいた方々ありがとうございます!m(__)m

期待に応えられるようがんばります!!

物語の方ですがいや~戦闘シーンは難しいですね;;これから精進しようと思います。

あと、村にようやく着きました。ここからどうなって行くのかどうかお楽しみにノシ


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