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「お楽しみのところ邪魔してスミマセン。」
ライは剣を鞘に仕舞いつつもサラから目を逸らさない。眉ひとつ動かさない。器用なことだ。蛇に睨まれた蛙とはこんな気分なのか?
冷や汗がダラダラ背中を伝う。
「あ、あの、ですね、」
手の震えは襲われたからなのか、ライの登場によるものなのか。
「今襲われてましたねぇ。俺が来なければ犯されてましたね。全身傷だらけで。」
サラの前で「俺」なんて言ったことがない。
とんでもなく怒っている。
顎を持ち上げられる。さっきの盗賊にされたのとは違い嫌悪感はない。涙の跡を親指で拭われた。
何も言えない。ゴメンとも有難うとも言えない。自分が情けなさ過ぎる。
「ここを下ればもうすぐ隣町なんですよ。行きましょう。この男達は隣町で届け出ておきます」
ライは4人を木に括りつけると散らばっていた荷物をまとめ終わるとそう言った。そして肩に抱きかかえられた。
「あ、歩ける…。」
掠れた声で訴えるが答えはない。
気づけば裸足だ。
隣町までこの状態で行くのだろうか。
サラを抱えているのに足が速い。
無言のまま。
何より恐い。
隣町までは言っていたとおりすぐだった。
ライは宿を見つけだして慣れた様子で部屋をとった。抱えられたまま階段を上がる。
宿の主人が何事かと好奇心に満ちた目で見てくるがサラが傷だらけなのを見つけると眉を潜めた。
「湯も湧いてますから。どうぞ。」
「ああ、有難い。」
2階の突き当たりの部屋に入る。腕は痺れないのだろうか。部屋はベッドが2つ、小さいテーブルに椅子が2脚の簡素な部屋。
そのうちのベッドにゆっくり降ろされた。
「有難う…。」
「湯浴みしてきて下さい。それと、宿の中ではこの部屋以外では[様]はお付けしません、いいですね?」
頷いて階下の浴場に向かう。湯が温かいが擦り傷にしみる。
部屋に戻るとライが窓際に腰をかけていた。
「お腹は減ってませんか?夕飯が用意されてるそうです。そうでなければお休みを。」
「私はいい…」
合わす顔が本当になくていたたまれない。
モソモソとベッドに上がる。今日は寝てしまおう、明日にはまた城へ逆戻りだ。冷静になって謝ろう。
ふと、背後に気配を感じると気づけばライに押し倒された。
「ラ、ライ?怒ってるのは重々承知してるから」
さすがに殴られるか。
そう覚悟した。




