8
4時間ほど経っただろうか。辺りはもううす暗い。
山の中の小道が永遠に続く。
すれ違う人間もいなくなった。
「こんなにかかるのか。」
何も知らなかった。足は重く踵と爪先が痛む。ふと風も吹いていないのに山側の木々がガサガサと音をたてた。
「お嬢ちゃ〜ん。1人?可愛いね。でもこんな夜に危ないな。」
髭を生やした男達が4人。サラを取り囲む。とても上品とは言えない顔つきでサラを舐め回すように見てくる。
「男みたいな格好してるけど女の子だよね〜着ているものは品が良さそうだ。綺麗なお顔もしてるね〜。」
リーダー格の男がサラの顎を持ち上げる。他の男達はニヤニヤ嗤っている。
「触るな。」
睨むと男が噴き出した。舌舐めずりする。
「威勢がイイね。身ぐるみ剥がしてオジサンが可愛がってやるよ。」
(早々にサイアクだ。)
ドカッ‼
男の急所を蹴り上げた隙をついて走る。
「テメェ‼」
他の3人が追ってくる。細長い男が足が速い。続いて太い男とマッチョが追ってくる。
(ヤバイ、かな。)
細い男に腕を掴まれうつ伏せに倒された。
細いとは言え男の力。足掻いてもビクともしない。
「つっ…。」
蹴られるのを予想してか足の上に乗られた。
「手間かけさせるなよ。容赦しねぇ。」
リーダー格の男が追いついてサラの髪を引っ張った。
(アッサリと終わったか)
悔し涙が出る。こんな男どもに涙なんて見せたくないのに。目を瞑る。
男の手が服を脱がしかかった。
ーこわいーそう思った時
「グエッ!」
蛙のような悲鳴とも嗚咽とも言えないような声が聞こえて目を開けた。
すでに周りの3人は倒れており、服を脱がしかかっていたリーダー格の男が白目を剥いて倒れるところだった。
「え?」
見上げるとどうにも不機嫌…いや鬼の様なオーラを纏った男がいた。
つい4時間前には固まっていた男。
本気で怒らせたらヤバイんだろう男。
「…ライ。」