7
「ハァハァ……」
未だかつてないほど猛ダッシュ。
息が苦しい。喉の奥が痛い。こんなに城下の端まで来たのは初めてだ。
上手くいったかな。立ち止まり後ろを振り返るが誰もいない。いや、猫が一匹いるにはいるが。
木陰に座り込んで息を整える。
「これからどうしようか。」
このまま北へ道なりにひとつ山を越えれば小さな町につくはずだ。
飛び出して来たものの漠然としたもので、目的地などない。
後ろめたさと自由さと畏怖と妙に入り混じった感情だ。いつだって周りに護られていた為こんなに不安感に駆られたことはない。
「甘えただな」
自嘲する。
ライはどうしただろうか。
あんなにビックリし固まったライは予想外だった。まぁいきなり小娘にキスされたら驚くか。そこを突き飛ばして猛ダッシュしたのだ。
あまりの姫のダッシュに門番達も呆気にとられているだけだった。そのためあっさりと城を抜けることが出来たのだった。
(騎士団長さまを驚かせたい?そりゃあチューのひとつでも姫さんがやってやりゃ倒れるんじゃないですかい?)
ガハハ!と豪快に笑う料理長に3年前ぐらいに聞いた手だ。何をしても冷静なライに何かないかとサラが聞いたらそう答えた。
いつも豪快でサラにも畏まらず接してくれたものの去年故郷に帰った。
そうだ、ちょうど隣町だ。寄ってみようか。
城では今頃大騒ぎかな。サラが逃げ出した事でライが 万が一罰せられないよう手紙を送ろう。
日が傾いてきた。日が暮れるまでに隣町につくかな。
ごめんね、ライ、兄様。
サラは背を伸ばし歩き出した。