夢
「いいかい?サラ。君にとっておきの秘密を教えてあげよう。可愛い可愛いサラー
君はー」
「…ま、サラさま。」
眼を開けると天井、ではなくライ。この男どの角度から見ても完璧だな。憎たらしい。
「汗だくですよ。嫌な夢でもみましたか。」
ライが額に張り付いた髪を流してくれる。
確かに全身汗だくだ。昨日はあのまま宿に泊まって寝たはず。ライは寝るまでと、そばにいてくれた。いつのまにか眠っていたらしい。今は何時だ?
「もう明け方です。」
身を起こすと背中を支え、察したように教えてくれる。
「ずっといてくれたんだな、ありがとう。
ライは優しい。汗だくじゃなかったら抱きつくんだけど。」
「…貴女、おかしいですよ。どうしたんです。」
夢ー、か。
あれは…。
「風呂入ってくる。たしか夜じゅう空いてるっていってたよな?」
ベッドから立ち上がり風呂の準備をする。こういう宿屋は有難い。
「サラさま。」
不意にライに右手を掴まれた。
「汗だくでも気にしません。抱きついて下さいよ。」
言うより早く抱きしめられる。
「え…」
「俺に隠し事はしないで下さい。いいですね?俺は、貴女が望むなら何だって叶えて差し上げます。」
ちょっ…耳元は反則‼
身体がゾクゾクする。
「わ、分かったから!ほら風呂行ってくる!」
ライの腕の中でもがくがビクともしない。
「またからかって!」
「本気ですよ。」
腕が緩まるとライが私の唇を親指でなぞる。
「お風呂、場所分かりますね?」
無言で頷くしかできなかった。
宿は静かだ。私もなるべく静かに階段を降りる。
こんな時にドキドキしてる場合じゃない。
兄上はどうなった。本当に死んだとは思えない。
何が起きてるんだ。
でもあのライの態度、何か知っている?西に向かうのも理由があるのか。
「ー人には隠し事するなって言っておいて!」
あの夢は、思い出せそうで思い出せない。
ーすごく嫌な夢で、しかしすごく懐かしいような。