【邂逅編】 ①
「ちっさい国だな。王都でこんなものか。」
平和そうではあるが、攻め込まれたらすぐ落城しそうだ。
男は城下を眺め、先にある灘らかな丘の上の城を見て呟いた。
ここもつまらなそうだ。適度に路銀を稼いだら次へ行こう。
「そこ退いて退いてー!!!」
頭上から声がして見上げると同時に何者かが降ってきた。反射的に避ける。
なんだ⁉気配感じなかったが、子供だからか?戦場慣れした男は気配にも鋭かった。
「痛いー!」
一緒に降ってきた木の葉がまとわり付いた一見少年の様な人間が叫ぶ。
「ガキ、大丈夫か?」
「ガキじゃない!」
キッと睨みながら見上げてくる〈それ〉は綺麗な顔をして、服装も中々上等のものを着ている。めんどくさいのには関わない方がいい。旅人がウチのお嬢様に怪我させたの何だの冤罪にされちゃ、たまらない。
「女の子が木登りか?もう良いお年頃だろ、ほら膝擦りむいてるぞ、家帰れ~。」
シッシッ。
「私は猫じゃないぞ。あんた誰だ?旅人か?
眼がおかしい。」
眼がおかしい?
「俺は眼はいい方だ。」
動体視力も良い。
「眼が生きてない。」
小娘に目元を触られた。目の前の小娘の眼は真っ直ぐに射抜いてきて眼がそらせない。
どんな強靭な男より強い気がした。
「あんた、誰だ?」
「ーライ・エヴァンス」
自然と口が動いていた。