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紺碧の書 ~アトランティスの幽霊船~  作者: 蒼十海水
第五章【ガーディアンとの戦い】
16/18

【Story.15】

「…これは…。」


「驚いた?―――ここが、俺たちの反撃の鍵となる場所だよ。」


その部屋は、これまでで一番明るい環境と言っても良いかもしれない。天井一面から降り注ぐ青白い光で、手の皺までもがくっきりと見える位だった。恐らくそれは、ここで細かな作業をしていたからなのだろうが…。


「せんちょー…。その前に、部屋に入るのも躊躇われるんですが。」


「大丈夫、動かないから。」


今も、いくつもの無機質な目に見つめられているように錯覚してしまうのは、気のせいだろうか。壁の両端に一定の間隔で置かれた六角形の柱の中には、脚が折り畳まれたガーディアンが一体ずつ収納されていた。

ご丁寧に前面だけがガラス張りで造られたそれは、幾つも並ぶとコレクションケースのようにさえ思えてくる。

そのケースにはそれぞれ記号が刻まれており、また中のガーディアンによって形状に多少の違いが確認できた。

ただ気になるのは、そのケースが天井に繋がっていることと、一番左奥にある筈の一体がケースだけを残して無くなっていることだ。


「もしかして、あの上に居るガーディアンは…。」


「うん。たぶん今まで、ここに居たんだろうね。」


コンコンとケースを叩くレイス船長は、至って冷静だ。しかし私とフレア姫はまともに部屋の外へ退避すると、残るガーディアン達と慌てて距離を取った。

冗談では無い。一体だけでも手こずるのに、あんなのに何体も動き出されて堪るか。

そうして青ざめながら船長を見守っていると、あろうことか彼は、空のケースの隣に並ぶガーディアンを取り出そうとし始めた。


「フレア、悪いけど手伝ってくれるかな。アクアはとりあえず、部屋の中で使えそうな物を物色してて。君はこういう目は良いみたいだから。」


「…。」


(それって、褒めてるつもりなんだろうか…。)


怖々としながらも、素直に船長の言葉に従うフレア姫に、私も早速部屋の中を調べ始める。

その間、奥の二人は動かぬガーディアンを取り出し、床に寝かせようとしていた。

いつもながら、船長の考えは本当に謎だと思う。


「さて、五分で分解がてら説明するから、フレアはこれからの行動について聞いててくれる?」


「はい。…でも、分解してどうするの?」


「これはたぶん、ケースの数字からして、上にいるやつの一個前の型になると思うけど。基本的な構造はそんなに変わらない筈だからね。出来れば一撃必殺の弱点とかも、調べておきたいでしょ。」


「おお! さっすがせんちょー!! あざといね!!」


「アクアそれ、褒めてないでしょ。」


部品棚らしき細々とした場所を漁りながら、適当に合いの手を入れてみたつもりだが、さっきの仕返しみたいになってしまった所が笑える。それでも味方にあざといならともかく、敵にあざとい分は頼もしいと思うのだが…。


(機械の部品なんか、見ても分かんないからなぁ…。工具箱っぽい物だけ船長の傍に置いておこう。)


重い工具箱を二人の所へ運んでいき、置きがてら装甲を取り外されたガーディアンを覗き込む。

すでに船長の手持ち道具で内部を晒し始めたそれは、こうしてみると機械人形以外の何物でもなかった。


「―――ありがとう。アクア。」


「いや、私のことは気にせず。お話続けててよ。」


船長は今、手を休めることもないまま、資格者についてなどを姫に大まかに説明している。

なんというか、海賊の長なんてやってるわりに器用だよな…と改めて考えていると、一瞬、科学者のように白衣を纏った船長の姿が浮かんできた。


(うん、似合う似合う。)


それが昔の記憶のように感じたのは、きっと気のせいだろう。私は自然と笑みを浮かべながら、次の棚へと物色範囲を広げていった。今度はいくつもの空箱や容器が乱雑に置かれている場所だ。

箱は何の遜色もない、分厚い紙で作られただけの物だった。こういう物はさっさとゴミ箱に捨ててしまえば良いと思うのだが、ひょっとして箱を捨てる間もないほどに、中身を早く使いたかったのだろうか。


(くっそ~。気になる。何が入ってたんだろう。)


一つの箱を手に取り、よくよく中を覗きこんでみる。遥か昔の物でも、施設内の物ならば腐食するどころか埃すら積もっていないのがこの都市の良い所だった。物色も心なしか楽しい。

しかし、今の状況で空箱にそれほど時間を掛けるわけにはいかない。諦めて、もう一つ下の段を調べてみようかと悩んでいると、たまたま手に当たった一つの箱が、他と違って若干重みを持っているような気がした。

そこで正面からまじまじと箱を観察してみると、どこかで見たようなエンブレムが施されている事に気付く。


「あれ、この絵って…。」


よくある羅針盤に描かれるような、太陽を模したトゲトゲのマーク。それが馴染みのあるものだという事に気付き、私は腰のホルスターに差してあった古い銃に手を伸ばした。

これは幼き頃からずっと身に着けているものだが、一度も使ったことはない。理由は二つで、一つは単純にこの銃に合う弾が売っていなかったから。そして二つ目は―――六歳の時に記憶を無くした状態で彷徨っていた時、唯一の持ち物がこの銃だったから、というものだ。

これが、ひょっとしたらいつか、私の記憶を取り戻すきっかけになるかもしれない。だからこそ、大事にしておきたいのだ。


(やっぱり、細かい所までまったく同じ模様。)


例えば、世界に太陽を模したマークを掲げる団体はいくつも存在するが、そのどれもが多少は異なっており、細かい部分までよく見れば、大抵は違いが目につく筈だ。

だが、今箱と銃身を見比べてみても、これらのエンブレムはまったく同様の物に見える。

とすれば、この箱の中身はおそらく―――


「銃弾…。」


箱の底に敷かれたスポンジ素材の上に、チャリ、と二つの銃弾が転がっている。

その一つ一つにも同じエンブレムが施されており、それらがアトランティス製の物であることを示す、虹色を宿した白銀であることも分かった。


「―――アクア?」


「わぁっ!? な、何?呼んだ?」


別にやましいことをしているつもりはなかったが、ここで自分を呼ぶ声に気付いた私は、反射的に弾を服の中へと仕舞いこんでいた。

突然呼ばれたせいかは分からないが、心臓がドキドキと高鳴っている。


「ちょっと、いい?」


慌てて振り向くと、いつになく真面目な顔をした船長が手招きをしていた。

そこで呼ばれるままに近くへと寄ってみると、皮膚を剥がされた人体模型…でもないが、表面の滑らかな部分を取り外された機械人形が目につく。特に頭部は、目の逸らしようがない程の存在感を放っていた。

ぐりんとはめ込まれた赤い目玉も強烈だが、こういう物を見ていると、なんとなく怖い気持ちになってくる自分がいる。私も結構、臆病な所があるらしい。


「ここ。額の中心の奥側に、緑色の物が見えるでしょ。」


「うん。何かここだけ、すごい抉れてるけど…。」


「それだけいくつものパーツを外したんだよ。アクアがさっき言ってたでしょ。"一撃必殺の弱点"ってやつ。」


「その弱点が、あの緑色の部分ってこと?」


頷く船長に、改めて額の奥を覗き込んでみると、エメラルドのような不思議な輝きを持つ個所があった。

とはいえ、それが見えるのはほんの数ミリ程度。周りはどうやったら外せるのかも分からないほどに、何層もの金属パーツが入り組んでいる。


「弱点、ちっちゃすぎじゃないですか。」


「実際には、コイン台の小片(チップ)が嵌められてるみたいだけどね。今の所見せられるのは、これが限度かな。」


「う。狙うのだけでも難しそうだね。」


つい正直な意見を零す私に、船長とフレア姫の意見が続く。

確かに、ここまで奥まった場所に埋められているとなると、攻撃するにも掘ったり抉ったりしなければ、到底届かなさそうだ。これが木で出来た人形で、ドリルで穴を開けるというならまだ楽な作業だろうが。


「あの緑を何、破壊しなきゃ止まらないって?」


「う~ん、どの程度のキズでっていうのも、明確には分からないしね。」


ここがガーディアンの弱点というならば、頭部を切り離したりしても良いかもしれないが、それは額の中心を狙う事よりも難しいだろう。何しろこの機械人形は、私がこの都市で得た盾と同じ物で全身が覆われているのだ。

ということは、同じくこの都市で得た武器では、ガーディアンの表面にキズを付けるだけでも精一杯かもしれない。


「じゃあさ、銃とかで額を撃ち抜くっていうのは?」


「例えばこの都市の銃か何かがあったとしても、一撃必殺って訳にはいかないだろうね。まったく同じ場所に何十発撃ち込むっていうなら、話は別だけど…。ましてや外界の銃なんて、弾かれて終わりかな。」


「なら、私の炎で…。」


「さっきも言ったけど、君はこの戦闘には参加できないよ。他にやるべきことがあるんだから。」


先程私が物色している間に、姫と船長が話していたこと。それには限られた時間内での私達の行動も含まれていた。

それによるとフレア姫は、フランベルグへの攻撃プログラムを止める事だけに集中しなければならない。

私と船長は、その間のガーディアンへの足止め係だ。それには、フレア姫の動きを隠すという役割も含まれている。いわば囮と言ってもいいだろう。


「だいじょーぶ、何とかなりますって! 任せて下さい!!」


「アクア…。でも、私だけ…。」


「先に言っておくけど、楽とか安全とか、そういうのは無いよ。前管理者の怨念を止められるのは君だけだし、俺たちだって、損な配置とは思わない。」


「…はい。」


「だから、姫は目標だけを見て、絶対にフランベルグを守って下さいね!」


まっすぐに、フレア姫の目を見て言葉を綴る。

私自身、迷いや不安が無いわけではなかったが、それをフレア姫に悟られる訳にはいかなかった。

今はただ、前だけを見ていて欲しいから。


「うん、…分かった!」


ガーディアンと真正面から戦って、勝ち目があるわけでもない。けれど姫さえ目的を成し遂げられれば、それは私にとっては"勝利"なのだ。

今回に関しては、それはレイス船長も同じだろう。彼もまた、目的の為の強い意志を持ってここへ来たのだから。


「安心していいよ。アクアは俺が守るから。」


「む?何故姫に言う…。」


「…そうだね。よろしくお願いします。」


―――ひょっとして、彼らの一番の心配要素は私なのだろうか。

それを感じた瞬間はもう、苦笑いを零すしかなかった。

確かに、この面子ではそうかもしれないと。








+++++



「ぐ…ぅ…!」


鎖を握り締めた両手のうち、耐えきれなくなった手の平から血が滴り落ちていく。

どうやらガーディアンとの力比べの前では、愛用の皮手袋さえ大して意味を成さないようだった。

しかも、ここへ来る前に姫に見て貰った左腕の傷さえ、今になって酷く痛み出している。

それはでも、仕方の無いことかもしれない。姫のヒーリングは自己治癒能力を高める手助けをするものであって、どんな傷も完治するような魔法ではないのだ。ここまで大した痛みもなく、血が止まってくれただけでも十分な奇跡だ。


(レイス船長…!)


初めは船長(レイス)の方が優勢だったあちらの戦いも、今では互角の勝負にもつれこんでいる。その攻守はスピードを増すばかりで、最早自分の目では捉えきれないものも多かった。

ただ、若干朦朧としてきたこの頭で、拭いきれない違和感をも感じている。

それは自らも、剣を極めようとしたことがあるからこそ、気付いた事かもしれない。


―――あのガーディアンは、恐らく学習している。レイスの剣技を。スピードを。力を。


機械相手に、それがどんなに恐ろしいことなのかは想像もつかなかったが、私には少しづつレイスの表情に焦りが生まれているようにも見えた。逆に、ガーディアンの動きはキレを増していくばかりだが。


(…ダメだ。もう…。)


おまけに、蜘蛛の片方の前脚と力比べをしてきたこの体でさえ、すでに踏ん張る力は限界を迎えている。

ズズッ…と大きく引き摺られた足の裏の感触に、ひょっとしたらこの力でさえ、ガーディアンは出し惜しみしているのではないかと思ってしまった。

ならば、敵に一番都合の良いタイミングで、一気に引き寄せられる可能性だってある。

例えば…そう、レイス船長の攻撃のタイミングに合わせて、盾のように放り出されたら―――。


ゾクリと、背筋に悪寒が走った。


(ダメだ。今は怖がってる場合じゃない…。)


呼吸だけでも落ち着かせて、一旦周囲を見回す。

そして考える。蕾の形をした建物の、ここは屋上。

状況を変える為には、およそ四歩進めばいい。だが、それだけの力が自分に残されているだろうか。

いや、残っているかどうかじゃない。出さなければ、命を賭してでも。


「くっ…そぉっ―――!!」


握っていた鎖を背負うように持ち替え、前のめりに体重を掛けながら、渾身の力で鎖を引く。

一・二歩は容易に踏み込めたが、最後の二歩でガーディアンの抵抗が強まった気がした。

あと、少し…!! そう思っていた時に、一際大きい金属音と共に、ガーディアンの力が一瞬だけ弱まる。

きっとレイスがうまくやってくれたのだろう。この期を逃さずに、私は滑り込むようにして、屋上から遥か下の地面へ向かって飛び降りた。


「―――アクアッ!?」


レイス船長の声が聞こえる。確かにこれは、戦闘前の約束を破る行為だ。それでも、収穫は十分にあった筈だ。

この危険な賭けで、ガーディアンの体が大きく傾いたのだろう。鎖の大部分が投げ出されたような手ごたえを感じた。

ジャラジャラと、敵がこちら側に引き寄せられた長さだけ、私の体は地面に近付いていく。ふわっと浮いた体に、風に背を押されそうな感覚を味わった。


「はぁ…っ、…は…っ…こ、こわっ…!」


どっ…どっ…と、体中が脈打つような心臓の鼓動が、音になって聞こえそうなほど高鳴っている。

今や宙吊りとなった私の体は、ガーディアンの運命と共にあった。

もしもガーディアンがここで踏ん張れていなければ、一人と一体で心中していた所だ。恐ろしいどころか心底嫌な感じだが。


(助かった…!! って言うには、まだ早いか。)


ふわふわと揺れる足が、なんとももどかしい。下を見ると、今度こそこの高さで落ちればぺしゃんこだろうという光景が、薄暗い中で広がっていた。

私は体を横に反転させ、鎖で体重を支えながら壁を歩くようにして上へと登っていく。

上に行くにつれて足場が小さくなっていく蕾の形状から、これはさほど難しい事でもなかった。逆に降りていく時も、滑り台のようにすればギリギリで助かっていただろうか。いや、それには角度が急すぎるかもしれない。


「こ、怖かった…。」


やっとの思いで蕾の淵に手を掛けると、その向こうの光景が目に飛び込んでくる。

私が落ちてからよじ登るまで、たぶん時間的には数十秒の出来事だったのだろう。それでもガーディアンの上半身は仰向けになるようにして、足場に背を付けた状態にいた。

あの六本脚はバランスが取れていたようで、案外不安定だったのかもしれない。これが八本で胴体を支えていたなら、また違っただろうが。

そんな好機を逃さず、槍を握るガーディアンの腕を足で押さえつけたレイスが、剣で人形の額部分に狙いを定めていた。前に錐で大ダコを仕留めた時のように、その腕にぐぐっと力が溜められているのが分かる。

こうなれば、すでに勝敗は決したように見えるが、まだ安心は出来なかった。

脚の伸ばされた向きと可動範囲から考えて、先程攻撃に使われていた二本の脚では今のレイスに届かないだろうが、奴の全身は硬い金属で覆われている。

レイスの内に眠る力がどれほどのものかは知らないが、まず一撃で装甲を貫くのは無理な話だろう。


(え、…なに…?)


その時、私の目が捕えたのは、ガーディアンの口元に収束していく竜脈の流れだった。

それは何か、とてつもなく恐ろしい力のような―――


「レイス!! 危ないっ!!」


ビュンッ…!! と、夜空を一筋の光線が裂いていく。

虚空にすら残像が残りそうなそれは、ガーディアンに隠された切り札なのかもしれなかった。

ああしてレイスと近くで対峙する瞬間を、奴も狙っていたのだろうか。それすらお得意の計算だったかと思うと、戦意すら今にも喪失してしまいそうだった。


「…っ!」


間一髪でかわしたレイスの頬に、一筋の赤い線が走っている。

今では顎の部分が大きく開き、口の位置に発射口を表したガーディアンに、その奥では今だ光が蓄えられていた。

その光に照らされた船長の表情は、こちらが凍りついてしまいそうな程冷静だ。


これが普通の人間だったら、普段の船長だったら、そこで退いていただろう。

ただその瞬間だけは、姫や私と同じように、レイス船長も命を賭けていたのだ。


ガギィッ!! ギィィン―――!!


レイスが渾身の力で振り下ろした、二度の剣撃。

一度目で額の装甲を浮かす様にして、二度目で深々と剣を突き刺したそれは、一度奴に近い物を分解した彼だからこそ分かる、最も最適な攻撃箇所だったのだろう。

まるで痛みがあるかのように、背を反らして脚をばたつかせたガーディアンに、その光線が再び宙に放たれる頃には、レイスは大きく後ろに跳んでいた。


「―――アクア。危ないことしないって約束したよね?」


「船長だって、たった今破ったじゃん。」


「俺は、分解した時にあの機能にも薄々気付いてたよ。だから避けられた。」


「私だって、ガーディアンが耐えることくらい分かってたもん。」


合流した二人に、少し怒ったような声のレイスが、腰に下げていたもう一本の剣を抜く。それはアトランティス製でもなんでもない、普通のカットラスだった。

主戦力だった長剣は今だ、ガーディアンの額に垂直に刺さったままだ。


「来るよ!!」


脚を一本ずつ畳んで伸ばし、器用に起き上ってきたガーディアンに、三度目の光線がこちらに向かって放たれる。

これも賭けだったが、アクアはあえて避けることをせずに、鏡のような白銀の盾でその光を跳ね返してみた。


ジャッ…!! と沸騰した油が弾けたような音を立てて、光は四散する。

これが相手にそのまま跳ね返せる攻撃であれば、これからの戦闘が大分楽になる気がしたのだが。どうやらそうもいかないみたいだ。

もうすぐ発動される"断罪の光砲"とやらも、この力を更に強大にしたものなのだろうか。

確認の為に盾を覗き込んだ私は、その表面が一撃で溶けてしまっている事実に、驚きを隠せなかった。


「この都市で作られた武器防具も、あの光線の前じゃ役に立たないってことか…。船長、どうする?」


「でも、光が収束してから発射するまで、五秒から七秒ほどのインターバルはあるみたいだよ。攻撃ポイントも三秒前には決まっちゃうみたいだし、ぽんぽん連射はできないと思っていい。」


「それってうまく逃げ続ければ、当たる確率は低いってことだよね。」


「俺たちはね。」


その言葉に、不覚にも一時でも忘れていた存在が、脳裏によみがえってくる。

そうだ。敵にこんな遠距離攻撃があるとすると、足場の不安定な姫を狙われれば、かなり危険な状況に変わってしまう。

はっとして、思わずその方向を見てみると、首飾りから女神像の左肩へ登ろうとしている姫の姿が見えた。


『作戦に多少の支障あり。排除優先者を変更致します。』


考えてみれば、あの亡者達ですら、すべてが私達の位置を把握している感じではなかったか―――?

それに、私達が屋敷に居た時、どうやってガーディアンは的確に姫をおびき寄せ、攫う事が出来たのだろうか。


(まさか、私達の位置は全部…。)


これは"もしも"の話だが、誰かが今の状態の姫を遠距離攻撃で狙うとして。一番狙いやすいのは女神像の首飾りを"渡っている"時ではなく、肩へ"登ろうと"している時ではないか…?

そう考えると、今にも首を回転させ、フレア姫に向かって光線を放とうとするガーディアンの動きが見えたような気がした。―――いや、実際にそれは、私が次の行動に出なければ実行されていたかもしれない。

その瞬間、私の頭の中は真っ白になっていた。

この研ぎ澄まされた状況下で、今だかつてないほど、姫の死を濃厚に感じたのだ。


それはまるで、虫の知らせのように。

こちらを向いているガーディアンが、姫の居場所をすでに知っていると、気配で感じ取ってしまったのだ。


「―――ガーディアン―――ッ!!」


私は腰のホルスターから、護身用に持ち合わせていた銃を引き抜く。

あとはもう、ただ弾が尽きるまで、無我夢中でガーディアンに向かって撃ち込むしかなかった。


姫は、絶対に殺させたりしない…!!








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