92話 新人初登校
「アリス、国の情報交換と言っても、全てを伝えるわけじゃない。」
「わかっているわ。でも、何を話せばいいの?」
「僕と一緒に考えよう。こっちにおいで。」
クロムが手招きする。
アリスはリリィと手を繋いだままクロムの方へ近づく。
その様子を見て、ダイヤはニーニャに話しかける。
「もう大丈夫そうだ。あとは頼んだぞ、明日は一応一日中ついてやってくれ。」
「わかった。」
ダイヤはクロムの部屋から出ていく。
「はぁ、焦ったわぁ。ここまでひどいんは久しぶりやったけど、大丈夫そうで何よりやわ。」
「そうですね、早く気付けてよかった。」
「明日、来てくれるかなぁ。」
「大丈夫ですよ。僕達頑張りましたから。」
翌日、ソレイユとリュンヌ、ヴァイオレットに呼ばれ、風車の絵が彫られた扉の前に、俺達新人三人が集まる。
学校の制服を来た学生三人が俺達を待っていた。
「おぉ!みんな来たな!」
「じゃあ、行こう!」
双子のあとに続いて、メグとウィルが扉の向こうに入る。
俺は扉に入る前に立止まってしまった。初めての場所、初めて合う人に緊張してしまったのだ。
ヴァイオレットが俺の背中を軽く押す。
きっと”大丈夫だ”と伝えてくれているのだろう。
俺はヴァイオレットと共に扉をくぐった。
扉を抜けた先は魔法学校の前だった。
ゲームや漫画で見たような、高い塔におかしな形の屋根。煙突からは不気味な煙が出ていた。
「早く来いよ〜!」
「校長室まで案内してあげるよ!」
ヴァイオレットが俺の手を引いて校舎の中に入る。
中は西洋風の学校になっており、大きな中庭や、変わった教室、知らない人の肖像画があり、俺の興味をそそった。
色々見ながら廊下を歩き、校長室を目指す。
ふと、前を歩いているソレイユが、チラチラと後ろを見ながら歩いているのに気がついた。
俺達が遅れていないか確認しているのだろうか。
しかし、任務でソレイユの後ろを何度も歩いたことがあるが、こんなことは初めてだった。
ソレイユとリュンヌが立ち止まった。そこは校長室だった。
「ついたよ〜。じゃあ、私達は授業があるから行くね!」
「じゃあな。」
ソレイユは俺と手を繋いでいたヴァイオレットの手を握り、リュンヌのあとについていく。
ここで、ソレイユがヴァイオレットに好意を寄せていることに気がついた。
申し訳ないという気持ちはもちろんあったが、ヴァイオレットの方から手を繋いできたので、不可抗力だった。
ソレイユ、許してくれ!




