89話 君にも言えない
「家族思いな兄やわ。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、俺にも教えてや。ニーニャの秘密。」
「えぇ、いいですよ。」
「ニーニャ、ライトとクイードのことでなんか知ってること無いんか?」
「そんなことでしたか。」
「そんなことってなんやねん。」
「いえ、何でも。クイードのことは僕はあまりわかりません。ただ、少しジンに似ている気がして。」
「ジン…、あぁ確かに、話し方とかあんな感じやったか。でも、顔見えへんかったからわからんなぁ。」
「そして、ライトさんのことですよね。彼は異世界人です。」
「え!?そんなサラッと言うことや無いやろ。俺の渋ってた時間なんやねん。」
「このことを知っているのは、ライトさん自身とクロム様、ダイヤ、僕。そして今この情報を僕からもらったテオのみです。決して、他の人には言わないでくださいね。僕が怒られてしまうので。」
「いや、それは言わんけど。てか、異世界人やったんか…。調べてみる価値はあるよな。」
「調べてくれるんですか?彼は元の世界に帰りたいらしいんですが。」
「やれることはやってみようと思う。元の世界に返す方法がわかれば、この状況…なんか変えれるかもしれへんよな。」
テオが立ち上がり、腕を組む。
「実は、魔人の出現についてダイヤに言われて調べてたことがあんねん。」
テオが奥の棚から資料がたくさん入ったファイルを持ってくる。
ファイルをニーニャの前にある机の上にドンと置くと、ペラペラとめくり始める。
「あ、ここや。」
テオがあるページで手を止める。
「この時空の歪み、これが鍵になってるんはわかったんやけど、こういうのって実際に見てみやなわからんねんな。」
「確かに、抽象的すぎて掴めませんね。」
「そう、せやから時空の歪みについて、まずちゃんと調べたい。」
「なるほど。根本から調べていくってことですね。」
「そうゆうことや。魔人が出現したら、俺に教えてくれ。」
「わかりました。」
「調べてみたけど、やっぱり詳しい情報はどこにもないな。三番隊にも確認してもらっとるけど、まぁまぁ時間かかると思うわ。」
「わかりました。もう遅いですし、僕は戻りますね。」
「うん、ありがとうな。」
ニーニャが部屋から出ようとドアノブに手をかけると、テオが呼び止める。
「ニーニャ。俺、お前のことめっちゃ大事に思ってるで。」
「わかっていますよ。お互い、最善を尽くしましょう。」
ニーニャはテオの方を見て微笑み、部屋を出た。
「ごめんやで、ニーニャ。」




