9話 猫の手も借りたい
俺はクロムと共にゲストルームを出た。
外には先程の猫の青年が立っていた。
「ダイヤはまだ中にいますか?」
「先に外に出ちゃったよ」
クロムが答えると青年はわかりましたと言って、ゲストルームの中のティーワゴンを取りに部屋に入った。
分厚いファイルを持っているが、ダイヤに持ってきたのだろうか。
「ライトがこの国の防衛隊に入隊するから2次試験用に指導してあげて欲しいんだけど、ダメかな?」
クロムが青年に話しかけた。
「僕は構いませんが、僕は今年も三番隊の代理で審査員にまわりますよ。」
「だからだよ。ライトは僕のお墨付きということでちょっとぐらいズルしても大丈夫でしょ。」
「ダイヤに怒られても知りませんからね。」
そういった後、ため息をついて少し困った顔で青年はワゴンを押して部屋から出てきた。
「あとで隊員寮にライトさんを迎えに行きます。一緒に特訓しましょう。僕の名前はニーニャです。」
彼はワゴンから手を離し、俺に綺麗にお辞儀した。その姿はヨーロッパのお屋敷に使える執事のようだった。彼はこの城に使える執事なのだろうか。
俺もそれにつられて深くお辞儀した。
「じゃあ隊員寮に案内するよ。」
俺とニーニャが顔を上げるとクロムが言った。
では、と言ってニーニャはティーワゴンを押して長い廊下を歩いて行った。
「助っ人って言っていたのはニーニャのことだったんだ。正式な審判員は試験の内容を言えないからね。」
そういえばニーニャは代理の審判員だと言っていた。ということは、試験の内容を事前に知れるということだ。
そんなことを話しているうちに寮に着いた。
外見も内装も俺が想像しているより綺麗だった。中は一つの広めの部屋に一つのベッド、トイレがあるのみだ。風呂は共同らしい。
なかなかいい部屋なのではないかと思う。
「じゃあ僕はこれで。」
「今日は色々とありがとうございました。」
俺が言うとクロムは微笑む。
「頑張ってね。」
彼はそう言うと城の方へ戻って行った。
クロムの姿が見えなくなると、俺は自分の部屋に入りベッドに座った。部屋には大きな窓があり、城の中庭が見える。中央に大きな白い噴水があり、白いレンガの道が十字に伸びている。その道や噴水の周りには色とりどりの花が咲いている。
綺麗な庭を眺めながら俺はニーニャを待つことにした。