85話 瞳の色
「どうして目の色が変わったんだ?」
「変わったんじゃない、元々あの色なんだよ。
この世界は目の色で大体の種族がわかるんだ。」
「そうなんだ。」
俺はダイヤの目の色を見る。
赤みがかかった紫色の瞳、ニーニャの瞳と同じような色だ。
「まず、エルリックみたいな黄色や金色の瞳は天使や天人に近い種族なんだ。だいぶ前の戦争でもうほとんどいない。
で、赤の瞳は悪魔や魔人に近い種族。これもトヤヘリノではあまり見ないな。
それ以外…緑や青、茶色なんかは人間に近い種族だな。」
「じゃあダイヤは人間に近い種族ってことか。」
「そういうことだな。」
どうやらこの世界では種族は重要なものらしい。
「元々あの色だったってことは目の色、つまり種族を隠していたってことだよね。」
「そうだな。瞳が黄色や赤色のやつは隠しているやつが多いんじゃないかな。」
「どうして?」
「黄色や赤色の瞳を持つ奴らは魔力量が多いし、お互い仲が悪い。争いを避けるために、自分を守るために隠しているんじゃないか?」
「自分を守るため…。」
「昔、人体実験や兵器実験に天人や魔人が使われたんだ。元々そのふたつの種族は争いを好まない、当時の人間が無理やり連れて行ってしまった。
そこで数がだいぶ減っているから元祖の天人や魔人がもういないと言われているんだ。」
ダイヤは悲しそうに話す。
「今このトヤヘリノに来ている魔人たちはそのことに恨みを持っている人間や人間から魔人に昇格した奴らだ。
…とてもじゃないが話し合いではどうにもできない。東の国は、基本団体行動で動くようにはしているが、もし一人の時に会ってしまったら、すぐ逃げろよ。」
ダイヤはこれまでにないほど、まっすぐ俺に目を向けた。
彼の話や行動から本当に危険だということが伝わってくる。
これ以上進めば、もう二度と戻って来れないのかもしれない。
俺の頬を汗がつたう。
話し合いではどうにもできない…、きっとダイヤは話し合いで解決しようと思い、行動していたのだろう。
だけど、上手くいかなかった。
彼は彼なりに魔人と戦っていた。多分、かなり前から。
コンコンとノックをする音が聞こえた。
入っていいと、ダイヤが言うとドアが開かれ、部屋にニーニャが入ってきた。
「マーガレットさんからお手紙です。」




