82話 試作
俺達は城に戻ってきた。
城に入ると、ニーニャはエルリックをぐるぐる巻に縛り、地下にあるテオの仕事場の椅子に縛り付けた。
この城の地下に初めてきた俺はテオの仕事場をぐるりと見回した。
仕事場には、いろいろな工具や機械、設計図が部屋の至る所に散りばめられていた。
「ちょっと汚いけど、明日は綺麗なはずやから。」
「それ、毎日聞いてるんですけど。…まぁ、いいです。ダイヤを呼んできますね。」
ニーニャは部屋から出て、階段を上がっていった。
テオは奥の方の木箱からごちゃごちゃと何かを探しているようだ。
ソレイユ、リュンヌ、カレンは床に落ちているものをガサッと寄せて座る。
ソレイユは床に落ちているものを手に取り、テオに尋ねる。
「これなんだ?」
「え?あぁ、それは試作段階の魔力抑制装置やで。」
「魔力抑制装置?」
「このリングをこうやってとって、首につけて。」
テオは説明しながら、ソレイユの首に魔力抑制装置を巻き付ける。
カチッと音がして、ソレイユの首に魔力抑制装置が付けられた。
「これで抑制されるのか?」
「まぁ、試しになんか魔法打ってみ。」
ソレイユが、それじゃあと右手を出してなにかに気づく。
「テオ、これ抑制と言うか全部消しちゃってないか?なんかバチバチってならないんだけど。」
「せやねん、だから試作。減らしたいだけやのに消しちゃっとるんや。」
「これ戻るのか?」
「後ろのボタン押したら取れるで。それ取ったら元通りや。」
ソレイユは魔力抑制装置を取ると、さっきと同じように右手を出す。
彼の手の平からバチバチと音がして、手を引っ込めた。
「おっと、ここで打っちゃまずいな。」
「なんかに使えるかなぁって思ってんけど、敵に近づくのは俺厳しいからな。」
「でも、何かには使えるでしょ。例えば、こいつに付けとくとか。」
リュンヌがエルリックを指差す。
「おぉ!ええ考えやな。起きる前に付けといたろ。」
テオがエルリックに魔力抑制装置を付けると、ちょうどニーニャがダイヤを連れて戻ってきた。
「え、テオ掃除しろよ。…こいつか。」
ダイヤはテオの部屋を見て驚いていたが、エルリックを見つけると、床に落ちているものを踏まないようにエルリックに近づいていく。
「この首に付いてるやつなんだ?」
「俺が作った魔力抑制装置(仮)やで。抑制と言うか、抹消してまうねんけど。」
「とんでもないな。」
そう言ってダイヤは俺の記憶を見たときと同じようにエルリックの頭に手を乗せた。




