81話 お土産
図書室のドアを開けたエルリックは、はぁはぁと息を切らしていた。
前に試験会場であって以来の再開だったが、特に彼に思うこともなく、この場にいた全員がキョトンとしてしまった。
「えっと、何の用やろうか。」
沈黙を終了させたのはテオだった。
「何の、用だって…、ここは、俺の、屋敷だ、…。」
「あぁ、そういえばそうでしたね。それでは僕達も帰りましょうか。」
ニーニャにそれぞれ返事をして、エルリックの横を通り過ぎて帰ろうとする。
すると、エルリックに出入り口を塞がれてしまった。
「おいおい、帰ろうとするな!ここに魔導書があるんだろ!俺に渡せ。」
「渡せって、お前の屋敷にあっただけで、お前のじゃないんだよ。」
「君のお父さんも魔導書は見つけた人にあげるって公表してもうてるし…。あ、屋敷ボロボロにしたんは悪いと思うてるで。」
「父さんが?…そういうことなら、お前たちから奪えばいいんだな。」
エルリックはそう言うと、魔導書を持っているソレイユに飛びかかる。
ソレイユはひょいと横に避けると、エルリックはどしゃぁっと床に転んでしまった。
「お、おい。大丈夫か?」
「俺にはそれが必要なんだよ!」
エルリックの急な大きな声にびっくりした。
なんだか様子がおかしい、彼は何か自分より大きなものにおびえているようだ。
ギギっと歯を食いしばるエルリックにニーニャが近づく。
すると、エルリックの顔を掴んで床に叩きつけた。
エルリックの頭はひび割れた床にめり込んでしまい、気絶したようだ。
「よくわかりませんが、なんだか様子がおかしいので気絶してもらいました。テオ、城まで運んでください。」
「え、やばない?まぁ、様子がおかしかったのは同感やけど。」
「身体的な問題ではなさそうでした。入隊の二次試験の時から、少し違和感があったので彼を調べましょう。」
「たしかに、こんなうるさいやつ連れて帰るのは疲労が倍になっちまうもんな。」
「ソルも十分うるさいけどね。」
「なんだと!」
テオはエルリックをヒョイと担ぎ、ソレイユとリュンヌは喧嘩を始めてしまった。
この状況を特別班の先輩たちは飲み込んでいるようだが、俺を含めた新人三人は全く飲み込めていなかった。
「まあまあ、みんないつもこんな感じだから〜。最初はびっくりするよねぇ〜。」
「ニーニャさんが怪力なのは知っていましたが、ここまでとは…。」
「ん〜、一番静かそうだけど、手が出るのが早いのはニーニャだよね〜。こういう時でも調子が変わらないのはソルリンぽいし〜、周りがパニックになった時に一番冷静なのはテオかも〜。」
ウィルの隣でカレンが話す。
驚いたが、みんなの意外な一面(?)を見れたのは良かったと思う。
俺達はエルリックを連れて東の城に帰還した。




