80話 いれかわり
「同期って、本当ですか!?」
珍しくニーニャが大きな声を出す。
驚くのは当然だ、シルファーたちと同期ということはかなり年を食っていることになる。
ダイヤといい、ザックといい見た目じゃ歳がわからない世界だ。
「まぁ、これ以上の情報は有料だな。」
「あなたは本当に何者なんですか。」
「ただの長生きな魔法使いだよ。」
ザックはそう言うと、図書室の出入り口に向かって歩き出す。
「用が済んだから俺は帰るよ。またね、ニーニャ。」
「えぇ、また。」
ザックが図書室から出て、パタリとドアを閉じるとクイードが口を開く。
「俺も帰ろうかな…。」
クイードは黄色の魔導書を見つめながら呟く。
「今日は収穫なしかぁ。」
「でも、重要な情報はいっぱいやから、これを持ち帰って三番隊にまた調べてもらお。」
クイードが顔を上げると、ソレイユとテオが話している。
それを見ながら一歩、また一歩と二人に近づき、ソレイユの肩にぽんと触れた。
後ろから急に来たクイードにソレイユは驚いたようだったが、クイードの顔を見ると振り返って小首を傾げる。
「クイード、どうしたんだ?」
「これ、ソレイユにあげる。」
クイードがソレイユに渡したのは、黄色の魔導書だった。
クイードは魔導書をソレイユの手にねじ込ませると、一歩下がる。
「これ…、さっきザックが言ってただろ?これはお前のものだよ。」
「俺のものだから、どう使うかは俺の自由でしょ?」
「何か企んでるのか?」
「違うよ、俺の願いが決まっただけ。」
「願い?」
「俺の願い君なら叶えることができそうだからね。」
「クイードの願いは何なんだ?」
「それは秘密。」
「願いがわからないと叶えられるものも、叶えられないぞ。」
「君なら大丈夫。信じているよ。」
クイードは彼の全身を覆うローブをパサッと舞わせると、きれいにこの図書室から消えてしまった。
何かクイードに言いかけたのか、ソレイユのクイードに伸ばした右手は行き場をなくして、宙に取り残された。
クイードが図書室から消えると、ドタドタと階段を登る音が聞こえた。
足音が図書室に近づくと、みんなが身構える。
ザックが出ていったドアと反対側のドアから図書室に入ってきたのは、どこかで見たことのある青年。
あれは、…エルリックだ。




