79話 魔法強制解除
「これかな?」
クイードがダイヤル付きの箱を持って穴から上がって来た。
錆びれた鉄製の箱は長い時間この屋敷の中に埋まっていたのだろう。
青い塗装がほぼ剥がれ、ダイヤルの数字も削れてしまっている。
「開けてみましょうか。」
「これどうやって、開けるん?」
「番号なんてわからないぞ。」
「力ずくで開けちゃえばいいんだよ〜。」
カレンがクイードから箱を受け取り、地面に思いっきり叩きつける。
金属の高い音が鳴り、箱は形が整ったまま地面に転がった。
俺には箱が少し光ったように見えた。
「カレン、どいてみ。」
テオが傘で箱をつつくが箱が開く気配はない。
また、箱が光ったような気がした。もしかしたら…、
「この箱、魔法がかかっているかもしれません。」
「そうですね、衝撃を与えた時少し光りました。火花かと思っていましたが、魔法と言われれば納得です。」
「まずこの魔法を解かな、開けることができへんってことやな。」
「でもどうやって解くの?」
みんなが考えていると、ザックが口を開く。
「箱見るからに、かなり古いものだろ。これなら解けるかもしれない。」
「本当ですか。」
「本当だ。ただし、条件が一つ。この中身はクイードのものだ、何が入っていたとしても。」
「え、俺にくれるの?」
「お前が一番に見つけたからな。当然だろ。いいか、ニーニャ。」
「わかりました。」
「ニーニャ、ええんか?」
「仕方ありません、僕ら東の国で魔法の強制解除ができるのは、リリィさんかダイヤしかいません。
この箱を彼らから奪い、そのまま城に帰れる可能性は零に等しいでしょう。」
「決まりだな。」
ザックは落ちている箱を拾うと、箱に手をかざす。
手から魔法陣が現れ、ザックの片目にも同じ魔法陣が現れる。
二つの魔法陣が消えると、ザックはパッと箱から手を話す。
すると、箱は地面に落ち、乾いた泥団子のようにボロボロと崩れてしまった。
箱の中から出てきたのは、大量の魔法石と一冊の黄色い本だった。
その本をクイードが拾い上げ、表紙についていたホコリを払う。
「トヤヘリノの古代文字…。」
「魔導書や!」
「なるほど、この魔法石に魔導書の魔力を吸わせて隠していたのか。」
「魔力を吸収する魔法石があるんですか?」
ニーニャの問いにザックが優しく答える。
「あぁ、俺もあまり見たことはないが、高ランクの貴族魔法使いとかよく持ってるイメージだな。
有名な魔法使いなら、シルファーやルカが持っていたはず。」
「ザックはシルファーに会ったことがあるのか?」
ザックはニーニャの時とは違う雰囲気でクイードの問いに答える。
「会ったことあるも何も、俺あいつらとほぼ同期だぞ。」




