8話 それぞれの目的
「俺等と協力関係を結ぶことか。」
ダイヤがそう言うとニヤリと笑みを浮かべた。
俺は黙るしかなかった。いたずら好きの妖精はこっちだったかもしれない。
そして彼は人の心が読めるということがわかった。これまで俺が思っていたことはすべて筒抜けだったということだ。
「安心しろライト、クロムが本を集める目的は願いを叶えるためじゃない。本が集まること自体が目的なんだ。お前が魔導書を集めようが俺等に害はない。」
俺の頭の中は、”はてなマーク”で埋め尽くされた。それはクロムも同じだったようだ。
「え、どういうこと? ダイヤ、ライトのことを疑ってたの!? 俺が連れてきたのに、」
「誰が連れてきたとか関係ないから。魔力無し人間が魔導書持ってるって、怪しい要素しかないだろ。」
クロムは少し怒ってるように見えるが、ダイヤはサラリと流している。
たしかに自分のテリトリーに謎多き人物が入ってくるときは、俺も警戒するだろう。
「ライトは俺等と協力関係を結びたいんだろ?どうするのがいいと思うんだ?クロム」
「そうだね。」
さっきの表情とはガラッと変わり、クロムは何かを考えているようだ。
ふと、クロムと目があった。彼の何かを真剣に考える表情は今までとは全くの別人のようだ。これが東の国王の王としての顔なのだろう。
「協力となると東の国の防衛隊に入ってもらうってかんじになるんだろうけど…
魔導書を集めるための情報がいち早くまわるし、どうかな。」
「防衛隊ですか。」
俺は警察のようなイメージを一瞬考えたが、こういう異世界の防衛隊は多分だが軍隊に近いのだろう。
しかし元の世界に帰るためなら躊躇はできない。
俺はクロムの目を見て応えた。
「防衛隊に入隊します。させてください!」
クロムがうなずき、ダイヤが椅子から立ち上がった。
「入隊試験は1週間後だ。書類審査と1次試験は免除してやる。」
「試験があるんですか!」
ダイヤはそう言い残すと部屋を出ていってしまった。
入隊すると宣言したもの試験に合格しなければ話にならない。不安になっている俺にクロムは優しく話しかけた。
「大丈夫!助っ人を用意しておくから!一次試験まで免除してくれるなんてダイヤは優しいな。」
「一次試験ってそんなに厳しいんですか?」
「毎年この時期に入隊の試験があるんだけど、昨年は合格者がいなかったんだよね。一次試験に合格したのも五人くらいだったはずだよ。」
俺はそう聞くと、ダイヤに心のなかで感謝した。(あの態度は気に入らないが)