76話 物理攻撃
頭が吹き飛んだ魔人の後ろにいたのは、ザックの銃を持ったニーニャだった。
ニーニャのきれいな黒髪は返り血で赤く染まっていた。
「流石だね、信じてたよ。」
「急に渡されて、驚きましたよ。」
「でも、できたじゃん。」
ザックが柔らかくニーニャに話しかける。
あんなザックは今まで見たことがない。
俺の位置からザックの顔は見えないが、きっと優しい表情をしているのだろう。
「下の階におりましょう。テオたちが心配です。」
呆れた顔をしたニーニャが階段に向かって、歩き始める。
その後ろを、ひよこのようにザックがついていく。
不思議に思っていると、倒れた頭のない魔人が起き上がる。
ニーニャとザックは気づいていないようだが、魔人は二人を追いかける。
俺は花精霊の槍を構え、走り出す。
すると、俺より早く魔人にたどり着いたカレンが、ギターで魔人に殴りかかる。
鈍い音とともに魔人が崩れ、倒れる。
カレンのギターは糸のようにほつれていってしまった。
「も〜。ふたりとも危ないよ〜。」
「すみません。ありがとうございます。」
「頭なくても動くって…。魔人って言っても人間とは遠く離れた存在だな。」
「高ランクの魔人だからかもしれません。」
「あの、高ランクの魔人って…。」
「高ランク、つまり持っている魔力量が多い魔人は知性があり、こっちの世界の言語を話すことができるんです。」
「こいつ、こんなことも知らないの?」
「彼は最近この地域に来た人なんです。優しくしてください。」
ザックはつまらなさそうに口を尖らせる。
「高ランクの魔人は昇格して、悪魔になることができます。そして、高ランクの天人は天使に。
悪魔や天使は神への昇格が許されるとか。」
「そんなこと本当にあるの〜?」
「わかりませんが、昇格制度があるのは本当ですよ。僕よりも、ちゃんと学校に通っていた人のほうが詳しいんじゃないですか。」
ニーニャはザックの方を見る。
「どうして、俺の情報がそっちの国に流れてるんだよ。」
「さぁ、どうしてでしょうね。…昇格制度についてライトさんに説明してくれませんか。」
「はぁ、君が言うなら仕方ないね。今回は特別だぞ、少年。」




