73話 乱入
ニーニャは壁の近くまで押されると、かかんでザックの攻撃を躱し、ザックの腹を軽く突く。
ニーニャが如意棒で突いたところには小さな爆弾がついた。
ザックは払って爆弾を落とし、後ろへ下がる。
ザックが後ろへ下がると、ニーニャが如意棒のボタンを押す。
すると、ザックの足元が爆発する。
ドンという大きな音が屋敷全体に響き渡り、煙を起こしてすこし揺れる。
最初に如意棒を床についた時にも爆弾が設置されていたのだ。
ギリギリで爆弾を避けたザックにニーニャが上から跳びかかる。
煙の中から急に出てきたニーニャに驚きながら、攻撃を避けてザックは尋ねる。
「君の聴力は、やはり素晴らしいね。この煙の中だったら君には敵わないかも。」
「もう十分ですか。僕はあなたと、きちんと話がしたいです。」
「君は俺と何を話したいの?」
「あなたは僕のことが知りたいと言いましたよね。僕もあなたのことが知りたい。」
二階の図書室ではニーニャとライト以外の東の国の特別班とクイードが集まっていた。
「でっかい音が鳴ったから来てみたんだけど、この階じゃないのか?」
「それ、私達も聞こえたんだよ。もう一つ上の階じゃないかな。」
「見に行ってみるか。」
テオがそう言って図書室から出ようとすると、ライトが入ってきた。
「ライト!ニーニャはどこや。」
「三階でザックと戦っています。助けを呼びに来ました。」
「よし、じゃあ行こう。リン達はこのまま二階の探索をしておいてくれ。」
テオとライトが図書室から出ようとすると、俺が入ってきたドアと対角にあるドアが開く。
見知らぬ男が見え、彼もこちらに気づいたように俺と目が合う。
それと同時に男は手に持っている、いや、刃になっている腕で俺の前に立つテオの背中に斬り掛かる。
テオもそれに気がついたようだが、既に男は彼のすぐ後ろにいる。
俺がギュッと目を瞑ると何かを弾く金属のような音が聞こえた。
目を開けるとクイードの全身を覆うローブの中からたくさんの鱗が生えたしっぽのようなものが男を弾いていた。
「大丈夫?テオと…ライトだっけ?」
「あ、ありがとう。それは、」
「そんなことより、次々入ってくるよ。」
グイードに言われ、先程の男が入ってきたドアの方に目をやると、たくさんの人がこの図書室に押し寄せていた。
「どういうことや!?」
「あれ、みんな魔人だよ。魔人にもここの魔導書の情報が回っていたなんて。」
「とりあえず、ヤバいってことだな。」
「でもどうしてテオを一番に狙ったのかしら。」
「カレンたちの方が手前にいたのにね〜。」
「魔人は魔力が高いところに集まるんだよ。本能のようなものなのかもね。」
「とりあえず、みんなぶっ飛ばせばええってことやな!」
テオの傘が赤く光る。




