7話 魔法と本と妖精と
「その人型の光も気になるが、まずはお前に魔導書の説明をしなくちゃだな。」
ダイヤはそう言うと、椅子に深く腰掛けた。
「まず、魔法の説明からだな。魔法は全部で10種類『炎・水・花・氷・岩・雷・力・光・闇・超』だ。魔導書は各種の魔法に一冊ずつあって、すべてトヤヘリノの古代文字で書かれている。魔導書にできることは、魔力の増幅なんだが、その種の魔法が使えなければ、たとえ魔力を持っていても魔導書は使えない。」
「水の魔導書を持っていても、その人が炎魔法しか使えなかったらその魔導書は使うことができないってことですね。」
俺が言うと、ダイヤがうなずいた。
「魔導書と名前が似ているものに”魔法書”というものがあるんだが、これはお前にも読めるはずだ。」
そう言いながらダイヤは左手を軽く握り、ぱっと開くと一冊の本が現れた。俺が持っている魔導書と同じ空色の本だったが、表紙の文字が読めた。
「お前が持っているのは氷の魔導書、これは氷の魔法書だ。」
ダイヤは魔法書を俺に差し出した。俺はそれを受け取り、中を見た。相変わらず挿絵は何の絵だか分らなかったが、文字は読むことができた。
「魔法書は簡単に言うと教科書や参考書のようなもので、各種に10種類ずつある。魔導書と違って魔力が増幅する効果はないが魔法を学ぶために使うってかんじだな。」
こう言い終わると、ダイヤの目付きが変わった。
「そしてここ、トヤヘリノでは今その魔導書をめぐって争いが起きている。」
「争い?みんな魔力を増幅させて兵士を強くしようとしているとか?」
俺は尋ねた。すると、今度はクロムが答えてくれた。
「実は魔導書にはもうひとつ力があって10冊全て集めると願いが叶うと言われているんだ。みんな願いを叶えるために魔導書を探している。」
「おとぎ話に過ぎないがな…まぁクロムが探すなら手伝ってやろうかなっていうのが俺の意見だ。」
なるほど願いが叶うということは、魔導書を10冊集めると元の世界に帰れるかもしれない。しかし、帰るために本を集めたいと今ここで言えば、この二人が敵となってしまう。特にこのダイヤという少年を敵に回すのは危ないような気がした。
「説明はこれで終わりだ。それで、お前はこれからどうするんだ?」
たしかにこの後のことは何も考えていなかった。
しかし、行く宛もなければこの世界のことがすべてわかったわけではない。それにダイヤの近くにいられることは俺にメリットしかない。となると俺がするべきは…
「俺等と協力関係を結ぶことか。」
ダイヤが呟いた。俺が今まさに考えていたことだ。




