66話 知恵と平和
数日後、どうやら魔導書を探す特別班を結成するらしい。
候補の人物がぞろぞろと二階の会議室に集まってくる。
候補者がみんな席についたようだ。
集まったのは、ソレイユ、リュンヌ、テオ、ウィル、メグ、それに俺と若草色の髪の少女。
背丈はリュンヌと同じくらいだろうか。オリーブのように丸い瞳が愛らしい。
少し遅れて、リリィが会議室に入ってきた。
「みんな集まってくれたのね。黄色の魔導書の情報を掴んだの。」
「おぉ!だからこの特別班を結成するんだな!」
「で、その黄色の魔導書はどこにあるの?」
「テイラー邸よ。」
「テイラーって入隊試験のときにいた、エルリックの!?」
「そんなやついたっけ?」
ウィルがそう言うと、みんなウィルの方を驚いたように見る。
「一番最初にニーニャさんが飛ばしちゃったけど、ウィルと話してたし…。」
「そうだったか。」
「まぁ、入隊試験のこと私は知らないんだけど…。とにかく進めるね。
うちの子達によるとテイラー邸の何処かに黄色の魔導書があるの。そして、この情報は魔導書を探している他の団体にも伝わっているようで、テイラー伯爵は早々に屋敷を離れたそうよ。」
「じゃあ、そのテイラー伯爵に直接どこにあるか聞けばええやん。」
「それもやってみたんだけど、伯爵はどこにあるか知らないらしいのよね。伯爵が持ってるというより、伯爵の屋敷が持ってるって感じかしら。」
「建物が持ってるということだね〜。それなら、そのお屋敷に突撃しよう〜!」
若草色の髪の少女が立ち上がる。
彼女の隣に座っているリュンヌが彼女をもう一度座らせる。
「まぁ、早く言ったほうがいいのは分かるんだけど…。心配なのはザックが来るかもしれないってこと。」
みんな思い出したのか、リリィの方に向き直る。
「魔導書探しの経験がある子とカレンちゃんに来てもらったんだけど。」
「なんで、カレンが呼ばれたの〜?」
「昨日ダイヤから聞いたのだけど、ザックは古い型の魔法を使っていて新しい型の魔法の耐性がないらしいの。」
「そっか!カレンの魔法は新しい型だから!」
「カレンさんはどういう魔法が使えるんですか?」
「ん〜?カレンはね、楽器の魔法だよ〜。」
楽器の魔法…。音を操るということだろうか。
それに音を操る系の魔法は新しい型の魔法らしい。
「君、はじめましてだよね〜。カレンはね、カレンだよ〜。二番隊の副隊長なの〜。仲良くしてね〜。」
「よろしくお願いします。」
俺がペコリと軽く礼をすると、カレンもペコっと頭を下げる。
彼女の話し方は、ふわふわとしていて暖かな気持ちになる。
これも声という名の音の魔法なのだろうか。




