63話 下校
夕方になると、ダイヤ、ソレイユ、リュンヌ、ヴァイオレットが城に帰ってきた。
「ライトどうだった?」
「外に出て見たけど、目を凝らしても魔法は見えなかったよ。俺のこの力を信用するなら、新しい型の魔法にちゃんと張り替わっているよ。」
『たしかに前とは違う魔力を感じる』
「じゃあ、防衛魔法はこれでいいか。協力ありがとうな。」
ダイヤがそう言って立ち去ろうとしたが、立ち止まり方向を変えた。
「ダイヤどうしたんだ?学校に忘れ物か?」
「ダイヤって忘れっぽいよね。もう年なんじゃないの?」
ソレイユとリュンヌがダイヤをからかうが、ダイヤがギロッと睨むと自分たちの部屋に逃げるように帰っていった。
「リリィが俺を探してる。いい感じに流しておいてくれ。」
「え、わかった。」
ダイヤは一番近くのドアに入っていった。
それとほぼ同時にリリィの姿が遠くで見えた。
彼女は俺とヴァイオレットを見つけるとこちらに駆け寄ってきた。
「ふたりともダイヤどこにいるか知らない?」
「ええっと…。」
俺が戸惑っていると、ヴァイオレットがダイヤが入っていったドアを指差す。
「あっちね!ありがとう!」
リリィはヴァイオレットが指したドアを開け、中に入っていった。
「良かったんですか。ダイヤが流しといてって…。」
「…。」
ヴァイオレットはスケッチブックに文字を書き始める。
そういえば、どうして彼女は筆談するのだろう。
この言語を話せないとか?声が出せないとか?
うーんと考える俺の服の裾を、ヴァイオレットが軽く引っ張る。
『多分父様が何かをやらかしたのだ リリィさんに叱ってもらおう』
「やらかしたって何をだろう。城の防衛魔法は大丈夫だと思ったんだけどな…。あ、」
俺は昼間リリィと話したことを思い出した。
「リリィさんダイヤは三番隊に仕事を押し付けすぎだって言ってたな。」
『確かにトレイはいつも父様に仕事を押し付けられている』
「そうなんだ。」
話題が尽きてしまった。
ここでヴァイオレットを置いていくのは気が引ける…。
俺が何も話さないのを確認すると、ヴァイオレットはソレイユとリュンヌが行った方へと歩き出す。
「どこ行くんですか?」
『ソルとリンの三人で宿題をやるのだ』
「そっか。ではまた。」
気まずい空気が流れてしまった。
廊下に一人取り残されてしまった俺はこの後どうしようか。
俺は、ハッと思いつきヴァイオレットとは反対の方向に歩き出す。




