49話 月が見えた日
クロムがダイヤの部屋を出たあと、ニーニャ、テオ、ヴァイオレットが部屋を出た。
「シルファーは会議に出るのかしら。」
「さぁね、あいつら次第だろ。」
「あの子達には敵わないわ。たとえ、シルファーがとっても強い魔法使いだったとしても。」
「そうかもな。」
ダイヤの部屋のカーテンがすべて開き、月が再び顔を見せる。
「長い時の流れは色々なものを風化させてしまう。」
「全てが消えてしまうわけではないわ。」
ダイヤの部屋を出たクロムはバルコニーに出て、月を眺める。
すると、後ろから話しかけられる。
「お兄様?どうかしましたか?」
「この国は俺が王で大丈夫なのかな。」
クロムの顔が曇る。
「私もいます。それにダイヤやリリィさんも。」
「うん。」
「東の国の王は、北の国の王に認められた存在。私と二人で承認されたのだから、お兄様と私は二人で一つ。」
「そうだよね。僕達ならきっと大丈夫!」
クロムとアリスは微笑み、手をとりあう。
二人の指には月光に照らされた白い宝石の指輪があった。
人族は月を眺めるのが今も昔も好きである。
それは、あの銀髪の青年も変わらない。
「ザック様ハニス様から手紙が届いております。」
屋敷の召使が銀髪の青年、ザックに手紙を渡す。
「ありがとう。」
「なんだか、少し嬉しそうですね。」
「ようやく俺の計画が進み始めたからね。」
「それは、とても良かったです。」
手紙を受け取り、再び月を見上げる。
(俺を西の国に強制送還したあのドア、きっとアイツだ。アイツさえ俺のものになれば…。)
ザックのニッと笑った歯が怪しく光る。
「俺の前に姿を見せた時点で、俺のものになるのは間違いないけどな。」
次の日、ライトが食堂に入ると、テオ、ソレイユ、リュンヌ、ウィルが一緒に話していた。
「おはようございます。何話してるんですか?」
「おぉ〜!ライトやん!」
「前会った銀髪男の話してたんだよ!」
「ソルをあんなにしたやつ私は許せない!」
「リン落ち着け〜!」
すごく元気な空間だ。
この速度、熱量の会話についていけているウィルがすごい…。
「ライトも銀髪に会ってるし、一緒に作戦考えてもらいましょうよ。」
「おぉ!そうだな!ここ座れよ!」
ソレイユは椅子をポンポンと叩く。
俺は席に座り、尋ねる。
「作戦ってどういうものなんですか?」
「まだ正確に決まっているものじゃないんだけど、ソルたちが遭遇した銀髪の対策を考えようと思ってんの♪」
「そうそう!俺等だけより、リンといっしょに考えたほうが頭が回るから来てもらったんだよ〜。」
「なるほどです。」
「今やってたんは、情報の整理や。ライト来たし、もっかい確認しとこか。
まず、アイツは星八個以上持ってるかなり強い魔法使いや。空間魔法使えたってのもあるし、もしかしたらランクはもっと上かもしれへん。
得意魔法は力魔法を含めた超魔法。ダイヤが言っとんたんやけど、ソルにぶち込まれた呪いも超魔法から変異したものかもしれへんから、超魔法が得意っていう認識や。ここまでで何かある?」
「はい!この地域のことについて、まだあまりわからないんですが、魔法使いのランクについて教えてほしいです!」




