5話 地図とティータイム
クロムが部屋に来るとすぐに言った。
「魔導書に詳しい人っていうのが今外に出ているダイヤなんだけど、帰ってくるのに少し時間がかかるみたいで…」
クロムが俺の向かいの席に着くと、猫の青年がティーワゴンを押して部屋に入ってきた。
白のカップに緑の桜の模様、そこに暖かい紅茶が注がれる。
「お砂糖はいくつ入れますか。」
「僕は二つ」
とクロムが答えたので、俺もと返事した。
俺は紅茶なんて飲んだことがなかったので、砂糖をいくつ入れるべきか分からなかったのだ。
俺とクロムの前に紅茶と焼き菓子が並んだ。猫の青年は壁際にワゴンを移動させ、彼もその隣に立った。
クロムは紅茶を1口飲むと俺に尋ねた。
「だいぶざっくりとこの地域について説明したけれど、どうだろう。ダイヤが来るまで時間があるし、僕が答えられることならなんでも答えるよ。」
たしかにこの魔導書以外にも知りたいことはたくさんあった。情報はいくらあっても困らない。
「じゃあ、この地域の四つの国と一つの街について詳しく教えてください。」
クロムは分かったというと後ろの棚からここの地域のものだと思われる地図を取り出した。クロムは地図を指しながら俺に説明してくれた。
「さっきも言った通り、ここトヤヘリノは四つの国とそれをむすぶ一つの街でできていて、それぞれの国にそれぞれの特徴があるんだ。」
クロムは三分の二が緑の国を指していった。
「ここ、東の国は黒の魔法使いシルファー・ブラックの妖精の森がある。森の中には泉があるんだけど、妖精はいたずらが大好きだから入るのはおすすめしないかな。」
俺は妖精のような声で話すクロムも実は妖精なのではないかと考えると、こうやって俺を自分の城に招き入れたのも彼のいたずらなのではないかと思ってしまう。(あまり人を疑うべきではないが、、)
そして、黒の魔法使いというワードも気になる。
クロムは港があり、レンガで赤みがかかった国を指していった。
「次は西の国、トヤヘリノで一番商業が盛んな国で人口も一番多いんだ。昔に決まった条約で僕とハニスはお互いの国を行き来することができないんだよね。」
なるほど、さっき俺に話しかけてきたハニスという男は西の国の人だったようだ。そして、たぶんだがハニスは西の国の王様なのだろう。
東の国と西の国の関係はよくないということはわかった。
クロムは魔法使いの帽子がかいてある小麦色の国を指していった。
「次は南の国、この国は獣人種族がたくさん住んでいて、魔法学校があるんだ。この学校は入るのも卒業するのも難しいらしいよ。あの3人の魔法使いも通っていた学校だから見学に行ってみたいんだよね。」
3人の魔法使いとやらはよくわからないが、クロムの声が少し明るくなったようだ。たしかに魔法学校に行ければ、この世界の魔法についてわかるかもしれないが…
クロムはただ青く塗られている国を指して言った
「最後の国は北の国。雪と氷で閉ざされてしまった国で、昔の地図や歴史書にも北の国の詳しい地図は載っていないんだ。通行許可証がないと入れないんだけど、一度入ってみたいんだよね。」
情報がない国があるのには驚いたが、こういうところにこそ興味がわいてしまう。一度入ってみたいというクロムの意見には賛成だ。
クロムは四つの国の間にある街を指していった。
「そして、四つの国をむすぶ街”フォンシーレ”と言われているよ。四つの国… 実際には三つの国の交流の場となっているんだ。大きな公園や、たくさんの屋台が特徴だね。」
俺が最初に目覚めた場所はこのフォンシーレという街だということが分かり、この地域の国々のこともわかった。
「こんなかんじかな」
そういってクロムがティーカップに手を伸ばした時、ゲストルームのドアをノックする音が聞こえた。