48話 知りたいこと
二十二時。エントランスホールの大時計がその時を告げる。
白く輝く宝石が埋め込まれた指輪をはめ、指輪をはめた手でクロムはドアを開ける。
ドアの先はダイヤの部屋だ。
沢山の本とドア、大きな窓があり、窓からは細い月が見えている。
中にはダイヤ、ニーニャ、テオ、ヴァイオレット、リリィが丸く大きいテーブルに座っていた。
クロムはその中の一つ空いている席に座る。
「ようこそ。さぁ、お前は何を知りたい。」
「僕が知りたいのは―――」
その場にいた全員がクロムの方を見る。
「この場にいる者が持つ、シルファー・ブラックのことについての情報だ。」
「それは…」
テオがダイヤの方を見る。
「構わない。俺等が知っているすべての情報をお前に教える。」
「ダイヤ…私は、」
「話したくないことは話さなくていい。でも嘘はつくなよ、お前ら。」
ダイヤはみんなをぐるりと見回す。
みんなが頷くとダイヤの部屋の窓がすべてカーテンで閉じられ、闇に染まる。
テーブルの上の燭台に次々と日が灯り、ダイヤが話し始める。
「この部屋の情報は外には届かない。さぁ、何から話そうか。」
「まず、シルファーに会ったことがある人は?」
「ダイヤ以外みんな会ったことあるはずよ。もちろん、クロムちゃんもアルクスちゃんもね。」
「僕も気づいていないだけで、会っていたということか。
じゃあ、逆になぜダイヤは会ったことがないんだろう。僕が会ったことあるのに、ダイヤが会ったこと無い人っているのかな。」
「いるんじゃないか?俺は会ったこと無いし、会えない。」
「会えない?」
「そうですね。でも見かけたことはあるのでは?」
「それはあるかもな。」
「みんなが見えるところにいるってことか。」
「せやな。探しもんって案外すぐ側にあることもあるしなぁ。」
『そう言うけど、テオは物を探すのがとっても下手だよね』
「え、」
テオが固まり、ヴァイオレットとニーニャがくすっと笑う。
「シルファーはどういう人なの?」
「それは見た目の話なんかな?」
『見た目で言うと絵本とあまり変わらない』
「黒い長髪に翡翠の瞳、魔法と音楽が大好きな北の国二代目の王。シルファーは人とお話するのも好きだし、クロムちゃんが会議に誘えばきっと来てくれるわよ。」
「でも、どうやって誘えば…。」
「僕が誘っておきますよ。来月の会議には必ず参加させます。」
『そんなことできるのか?』
「ヴァイオレットも協力してくれますよね。」
『仕方のない兄だ。』
「二人がやるんやったら、俺もやる〜!リリィさんも行きましょ〜!」
「私が行くと逆効果だと思うから、やめておくわ。」
『父様とリリィさんはお留守番だな』
「まぁ、そういうことなので、この件は僕達にお任せください。」
「うん。お願いね。」
クロムは優しく微笑むとニーニャ頷く。
その後も少し話してから、クロムは部屋をあとにした。




