47話 フヘンの日常
兵器…、兵器!?
俺は驚きを隠せず硬直してしまった。
ウィルは何もなかったかのように再び歩き出した。
「ダイヤが兵器って、どういう…。」
「ダイヤさんが自分で言っていた。だが、俺はそう思わない。」
「どうして?」
ウィルは足を止め、俺の方を振り返る。
「ココロがある。ココロがある限り、兵器には”なれない”。」
(なれない?まるで、ダイヤが自ら兵器になりたいとでも言っていたようだ。)
「ダイヤさんは兵器ではない。しかし、兵器になる可能性がある。
彼が伝えたかったのは多分そういうことだ。」
俺はどう返せばいいのかわからなかった。
人が兵器になってしまうとは、とても考えられない。それがたとえ魔法使いだったとしても。
俺の戸惑った顔を見て、ウィルはハッとした。
「…昨日郵便班から連絡が来た。班内で手違いがあったそうだ。今日、カードが届いた。俺の兄貴は生きている。」
「そうか。良かった!とっても!」
俺はその時にできる精一杯の笑顔で返した。
それを見てウィルも少し微笑む。
「もし、俺が気づかなくても、ライトが俺の兄貴に気づいたら教えてくれよな。」
「もちろん!」
俺はウィルと肩を組む。
俺とウィルが廊下で話しているのをダイヤは一つ上の階で聞いていた。
俺達が歩き出し、声が遠くなると、ダイヤも反対方向へ歩きだそうとする。
すると、眼の前にクロムが現れた。
「ウィルに伝えたんだ。ダイヤのこと。」
「あいつも、もう子どもじゃない。俺の助けになってくれるはずだ。」
ダイヤはクロムを避け、先へ進もうとする。
「ねぇ、父さんが君に何をしたの?」
クロムは腕を上げ、ダイヤの行く手を阻む。
「何もしていない。強いて言うなら、契約を結んだ。お前と同じように。」
「僕と、同じ…。」
クロムは顔を下げる。
ダイヤはクロムの広げられた腕をくぐり抜け、少し先へ進むと振り返る。
「今夜俺の部屋に来い。お前が知りたいことを一つだけ教えてやろう。
何を聞くか考えておくといい。二十二時に来いよ。」
「…わかった。考えておくよ。」
クロムは歩いていくダイヤの背中を静かに見つめた。




