46話 真実の目
「ニーニャさんは『案内する』と言っていたけど、ウィルはダイヤの部屋の場所を知らないの?」
「あぁ、知らない。そういえば、ライトはこの城に仕組みを知らないのか。」
「城の仕組み?」
「そうだ。明日教えてやろう。城の案内も含めてな。」
次の日俺はソレイユとの稽古を終えたあと、ウィルと合流して城の中を歩く。
「城の仕組みなんだが、”扉の魔法”が使われているんだ。
それにプラスしてダイヤの空間魔法が使われている。」
「扉の魔法は前に見たものだよね?ドアを通して空間と空間をつなげるっていう。」
「そう、そしてダイヤの空間魔法は”建物全体の透視”だよ。」
「建物全体の透視!?」
「この城ではダイヤに”何時・どこで・誰が・何をしたのか”すべて見られている。ただし、この空間魔法が使えるのは”ダイヤがこの城にいる間だけ”なんだ。」
「なるほど。昨日みたいにダイヤが出かけているときはこの城の中は見えないのか。」
「そうだ。だから、この城を守るためダイヤが城から出る瞬間に設置型魔法が発動する。
そして、この設置型魔法は空間や物を隠す魔法。」
「隠すって…。そんなことをしたら、この城にいる人は困るんじゃない?
ダイヤはこの城から出ないほうがいい気もするけど。」
「まぁ、ダイヤさんがこの城から出ないようにするっていうのは厳しいと思う。
一応、南の国にある魔法学校の教師でもあるからな。」
「え、じゃあ平日の昼間ダイヤがいないのって学校に仕事に行ってるからってこと!?」
「そうだと思う。
話は戻るが、ダイヤさんが外出するときに隠される空間、つまり部屋は何個かあるんだけど、常に隠されている部屋もあるんだ。」
「それがダイヤの部屋なの?」
「そうだ。”ダイヤさんの部屋・クロム様の部屋・ヴァイオレットさんがいる管理室”は常に隠されていて、特定の人、もしくはその人と一緒にいる人しか入ることができなくなっているんだ。」
「でも、昨日でダイヤの部屋の場所はわかったんだろ?」
「空間は移動する。いつも同じ場所にあるとは限らないんだ。」
「そんなこと知ってるのか。ウィル。」
声のする方へと顔を向けると一つ上の階からダイヤが俺達のことを見下ろしていた。
「ソルやリンから聞いたのか?」
「いえ、昨日ニーニャさんから聞きました。」
「なるほどな。」
「ライト、城には慣れてきたか?」
「うん、完全にとは言い切れないけど。城の仕組みもなんとなくわかったよ。」
「なんとなくでもわかったなら、それで十分だ。
空間は時間と共に常に移動している。だから移動している空間はつなげたり、自由に動かしたりすることができる。逆に移動していない空間はさっき言ったことができない。」
俺とウィルはポカンとする。
「何言ってるかわからないよな。俺も最初はそうだった。
でも、これが空間魔法の基本。これがちゃんと理解できた時、初めて空間魔法を使うことができる。」
「これが空間魔法が難しいと言われている理由ってことか。」
「そういうことだ。」
「でも、部屋っていうかなり大きな空間や物品をどうやって隠しているの?」
「うーん。それはまた今度。」
ダイヤは白衣をひらりと舞わせ、どこかへ消えてしまった。
「あれが東の国の最終兵器。」
ウィルがポツリと呟いた。




