45話 誕生日の約束
俺とウィルはヴァイオレットたちと別れて、二人で隊員寮に戻っていた。
『ファミリーか。』
ウィルがそう言ってから少し元気がない。
やはりお兄さんのことを考えているようだ。
「ウィルのお兄さんってどんな人だったか覚えてる?」
「え、そうだな。あまりはっきりとは覚えてないが、俺よりもかなり歳が上だったのは覚えている。ダイヤが俺の顔を見て、俺の兄貴に似ているってよく言うから、今の俺の顔に似ているんじゃないかな。」
「じゃあ、もし会えたらすぐわかっちゃうな!」
俺が明るく言うと、ウィルは立ち止まる。
「ウィル?」
「今日、俺誕生日なんだ。」
「そうなの!おめでとう!遅くなっちゃうけど、明日メグと三人でパーティーを…―――」
「兄貴からカードが届いていない。」
ウィルは俯いたままで俺から顔が見えない。
俺も思わず足が止まる。
「兄貴、もしかして…。」
「ダ、ダイヤはお兄さんのこと知ってるんだよね。明日…いや、今からでも聞きに行こうよ。」
「でも、」
「いいから行こう!」
ウィルの手を掴み、俺は来た道を戻る。
向かいからダイヤとニーニャ歩いてきた。
「ダイヤ!ちょっと話が。」
「どうした。そんなに焦って。」
「俺の兄貴から毎年誕生日にカードが届いていたんだが、今日は届いていない。」
ダイヤの大きな目は、さらに大きく見開かれた。
「確認しよう。」
少し早足でダイヤはどこかへ行ってしまった。
その様子をニーニャは心配そうに見つめる。
ダイヤが角を曲がり、見えなくなるとニーニャはハッとしてウィルに話しかける。
「『今日はあいつの誕生日なのに一緒にいてやれなくて申し訳ない。』とダイヤが言っていました。
渡したいものがあったようなので、あとでダイヤの部屋に案内しますね。」
「は、はい。」
ウィルの表情がさっきよりも少し明るくなったのがわかった。
俺は少し違和感を感じた。
(ウィルは随分前からこの城に長くいるようだけど、ダイヤの部屋の場所を知らないのか?)
しかしこの城はとても広い。城全部を見て回るというのは難しいのかもしれない。
(ダイヤの部屋はどこにあるのだろう。)




