43話 月は風を照らす
「ダイヤさん。それってどういうことですか。」
「もちろん物理的に近いんじゃなくて、関係が近い。」
「ということは、魔法使いの君は俺の周りを疑ってるってことでいいかな?」
「まぁお前が黒幕説も濃厚だがな。さぁ、知っていることを話してもらおうか。」
「俺は本当に何も知らないんだって〜。それに知っていたとしても、そんな頼み方じゃ教えてあげないよ。
例えばそうだな。俺が情報を出す代わりに、君が僕と組んでくれるとかね。」
ハニスはダイヤを見つめる。
ダイヤはフンッと鼻で笑うと口を開く。
「俺はお前みたいな”魔女”と組むようなことはしない。」
「君には言われたくないな。」
ハニスはニッコリ笑って頬杖をつく。
シェムは二人の会話を戸惑いながら聞いている。
「シェム行こうか。ここにデイヴィッドはいない。」
「あ、はい。」
ダイヤが立ち上がると、シェムも椅子から立ち上がった。
西の城の使用人が応接間のドアを開けると、シェムは部屋を出た。
ダイヤもシェムのあとに続いて部屋を出ようとしたが立ち止まって、ハニスの方を振り返る。
「その時計はどこで。」
「あぁ、貰い物なんだよ。」
「そうか。とてもきれいな時計だな。」
ダイヤはそう言って部屋を出た。
城の門をくぐり抜けダイヤとシェムは西の国の城下町に出た。
「あの、ダイヤさん!」
シェムはダイヤを呼び止める。
「ハニスさんは本当に魔女なんですか。」
「例えで使っただけだよ。怖がらせたのなら、すまない。」
「ダイヤさん。あなたは一体何者なんですか。」
「それは俺が一番知りたいな。」
そういったダイヤの目は今にも消えてしまいそうに、ただ淡く夕日を映していた。
二人は西の国の他に情報を得るために調査を続けたが、すっかり日が落ち、月がのぼり始めたので、この日は解散となった。
「やはり、十年間も停滞していたもの動かすというのはかなり厳しいですね。」
「そうだな。調査しようにも、あの国は普段見えるはずのものが、見えない。状況ははっきり言って良くないな。」
「そうですよね…、今日はありがとうございました。通行許可書が、なかなか取れないので北の国の調査は、まだ先になりそうです。」
「わかった。なら、ハニスと繋がりが強いやつから情報を集めるといいかもな。」
「そうですね、自国の商人や外交官から色々話を聞いてみます。」
「俺の方も情報を集めておくよ。何かわかればすぐにお前に知らせる。」
「はい!よろしくお願いします!」
ダイヤはシェムを見て微笑むと、片膝をつき、シェムの左の人差し指に指輪をはめる。
「おまもり。上手くいくように、な。」




