37話 王が望むもの
「ライトになら教えてもいいかもね。」
俺はこの言葉にドキッとしてしまった。
”ライトになら”とかいう限定的な言葉を使われると、多少ドキドキしてしまうものだ。
「まぁ、ダメそうならダイヤに記憶を消してもらおう!」
「え。」
ダイヤと俺はクロムの方を見た。
クロムはニコニコのまま理由を話した。
「僕が魔導書を集める理由はシルファー・ブラックに会うためさ。」
俺は戸惑った。魔導書とシルファーが俺の中で上手く結びつかなかったからだ。
「あまり知られていないんだけど、魔導書はもともとシルファー・ブラックを封印するときに使われたんだよ。どういう過程で封印することになったのかはまだ分からないんだけど、封印するときに魔力量が大きすぎて、それぞれの種類の魔力を分けた物が魔導書っていう説が一番濃厚かな。」
「じゃあ、魔導書を使うと魔力量が増幅するっていうのは…」
「シルファーの力を借りてるってこと。十冊集めたら願いが叶うのも、完全体のシルファーが何かを叶えてくれるんだ。」
魔導書にはこんな秘密があったのかと驚いたが、一番驚いたのはシルファー・ブラックは封印されていたことだ。
「シルファーは今も封印されているんですか?」
「五十年くらい前に封印は解けているって聞いたよ。」
「じゃあこのトヤヘリノ周辺にいそうですね。
でも、封印って…悪いやつには見えなかったんですけど。」
「封印と言っても色々あるからね。」
「シルファーと会って何をしたいんですか?」
「色々なことを聞きたいんだよ。彼のことや彼の友達のこと。魔法のことも聞きたいな。」
クロムのキラキラとした目を見て、シルファーへの思いが強く感じとれた。
「ダイヤは何か願いとかないの?」
「え、俺?うーん…」
ダイヤは天井の証明を見てぼんやりと考える。
特にこれといった願いは彼にはないのだろう。
なんとなく想像はついたが。
「トヤヘリノの長い争いが静まるといいな。俺は何事もなく暮らせれば十分だ。」
「そんなこと言って〜、新しいティーカップが欲しいとか思ってるんじゃないの?」
「それは自分で叶えられる望みだろ?俺にはできないこと叶えて欲しいよな。」
二人の楽しそうな会話を聞いて俺の心もホッコリした時、ダイヤが立ち上がる。
「さて、じゃあどこまで残そうか。」
クロムがそう言うのと同時に、俺が座った椅子の後ろにまわるダイヤの手が俺の頭に触れる。




