30話 シンユウ
「お前らに魔導書を渡すわけにはいかないんだよ。」
「危ないだろ!魔導書は早い者勝ちだぜ。」
ソレイユはそう言って剣を鞘から抜いた。
ソレイユの剣は日本刀みたいな形で、夕焼けのような色だった。
「じゃあ、俺もちょっと頑張ってみよっかな。」
テオはそう言って和傘を広げる。
傘の露先には天の川のような長い布と布の先に房飾りがついている。
「三人は魔導書探し頼むで。」
「はい!」
俺、メグ、ウィルは返事をしたあと銀髪の青年がいる方と逆向きに走り出す。
「お前たちはどういう願いを叶えるために魔導書を集めてるんだ?」
「俺等はクロム様の願いを叶えるためや。」
「クロム…あぁ、東の国の王かそいつの願いは何だ?」
「クロム様の願い…。」
テオは唇を噛む。
「願いの内容も知らないやつのために、魔導書を集めるのか。」
「願いの内容は確かにわからへん。せやけど、クロム様はダイヤの大切な友達や!」
「そうだ!俺らはやりたくてクロム様のために魔導書を集めてる。」
「ぬるいな。そういうお前らにも叶えたい願いがあるだろ。
今隣りに立っている仲間がいつ裏切るかわからない。そんな奴らと協力して王のために魔導書を集める…。」
ソレイユの剣を握る手に力が入る。テオはそれに気づき、一歩前に出る。
テオが一歩前に出るのを不安そうにソレイユは見つめる。
「お前、さっきから何言うてるかわからんねんけど。」
テオの傘が赤く光る。
「ソルが裏切るって?
俺のことを悪く言うんは構わん。でもな、俺の”親友”は絶対俺のことを裏切らん。」
「テオ…。」
「俺はお前に騙されとったとしても、お前の手のひらの上で踊ったるで。」
テオは後ろのソレイユに振り返ってニッコリ笑う。
テオが後ろを向いたと同時に銀髪の青年が剣を抜き、テオに迫る。
「テオ!後ろ!」
銀髪の青年が振りかぶった剣がテオの首にかかりかけ、テオがそれを傘で弾く。
テオの傘がまた光る。
「ただの狐じゃないのか。」
「当たり前やろ。ダイヤの厳しい訓練耐えてきたんやで、こっちは。」
「さっきから名前出てきてるダイヤって何者なの?」
「ダイヤはトヤヘリノ一番の魔法使いだぜ!」
ソレイユが剣を振りかぶり、銀髪の青年に斬りかかる。
銀髪の青年は後ろに跳び、剣を避ける。
剣からはバチバチと電流が流れる。
「テオ、俺もお前を信じてるぜ!だってお前は俺の一番の”信友”だからな!」




